KAITO誕

こんばんはー、初音ミクです!
あたしは今何してるかって?
えっとねぇ……。
「…ミク姉ぇ、ちょーっと顔貸してほしいんだけど…」
…実の弟機にカツアゲされるところかなっ☆



「えっ、お兄ちゃんの誕生日?」
レンくんのそれにあたしはきょとんとしてから笑ってしまった。
「なんだぁ、カツアゲされるかと思った」
「なんでだよ、しないよ」
「あははっ、だってレンくん必死な顔なんだもーん!」
けらけら笑っているとレンくんがちょっとムッとする。
「笑うなよ、おれは真剣なのに」
「ごめんごめん。っていうか、あたしで良いの?ルカちゃんとかのが確実だよ?」
「自分で言うなよな」
「だって事実だし」
「そうかもしんないけど、それはそれとしてミク姉ぇだって巻き込まレンカイしろよ!」
「巻き込まレンカイってなに?!!」
レンくんのセリフにびっくりしてしまった。
何その悪意しかない行為。
お兄ちゃんはともかくレンくんはなぁ。
「自分ばっか巻き込ミクルカしやがって」
「それは自覚ある」
「あるのかよ」
あたしの言葉にムスッとするレンくん…えへ♡
だって確かにあたしとルカちゃんのいちゃいちゃによく巻き込んでる覚えがあるもんなぁ。
「じゃあ巻き込まレンカイしてあげるけど…。うちじゃ、サプライズなしになったのに何を相談したいの?」
「サプライズじゃなくてプレゼントなんだけどさ、今年はアイスに合うお菓子を作ろうと思ったはいいんだけど…」
「けど?」
「…兄さんがめっちゃ手伝いたそうにそわそわしてる」
「…あー…」
言葉を濁すレンくんにあたしは遠い目をした。
お兄ちゃん、お菓子作りが好き(最早プロレベル)だからなぁ…。
レンくんも別に下手じゃないから、純粋に一緒に作りたいんだろうな。
「いっそ一緒に作れば?」
「おれやることなくなるし」
「じゃあ別の場所で作るしかなくない?」
「別の場所ぉ?」
あたしのそれにレンくんはちょっと意外そうな、また突拍子もない、と思ってるような声を出す。
だからあたしは、えへん!と胸を張った。
「んな場所どこに…」
「初音さんに借りれば良いんだよ!」
「いや、初音さん一緒に住んでるだろ」
「初音さんは初音さんにあらずだよ、レンくん!」
「はぁ…?…あ」
首を傾げたレンくんも正解が分かったようで声を出す。
眉を寄せるレンくんにあたしはピースを出してみせた。




「なんで許されると思った?初音さん」
「そこを何とか!!」
腕を組む相手にあたしは手を合わせる。
嫌そうな顔はあたしの先天性男性型亜種、初音ミクオくん。
亜種なんだけどあたしとは全然似てないから不思議だよね!
「いーじゃん!ミクオくんも、カイコちゃんにプレゼントするでしょ?」
「……。今回だけな」
はぁ、とため息を吐くミクオくん…なんだかんだ優しいよね!
「…何かすまん」
「…ま、姉さんにプレゼントが増えるのは吝かじゃないし」
ヒソヒソと男子が話してるのを流しつつあたしは材料を取り出した。
「つーか何作んの?」
「ブラウニーだよ!ルカちゃんからアイスに合う美味しいブラウニーの作り方教えてもらってきたんだから!」
「マジで?初音さん優秀じゃん」
「でしょ!ちなみに、カイコちゃんとルカちゃんはお兄ちゃんと買い物行ってもらってから3人で来る手筈です!褒めて良いよ!!」
「それはおれも行きたいから褒められないかな」
レンくんがあっさり言う横でミクオくんが激しく頷く。
すーぐ上げて落とすー。
「買い物ってことはすぐ帰ってくるな。何からやるんだ?」
「まずは生クリームとチョコを湯煎で溶かすからー…」
「初音さんを無視しないで?!!」
男子が始めちゃって思わず声を上げた。
レシピ調達は初音さんなんだから!
そんなこんなで、ブラウニー作りが始まった。



甘い香りが漂う。
無事に完成したブラウニーは味も上々だった。
インスタントコーヒー入れたから多少バニラアイスが甘過ぎても大丈夫そう。
「ただいまぁ、ミクオくん!あ、いらっしゃい、ミクちゃん、レンくん」
「こんにちは、お邪魔いたしますわ、ミクオさん」
「おじゃまします…あれ、レン?それにミクも」
丁度良いタイミングでお兄ちゃん達が帰ってくる。
「おかえり、姉さん。いらっしゃい、ルカさん、カイトさん。買い物ありがとう」
「うん、それは良いけど…どうしてレンとミクが?」
ニコっと笑うミクオくんにお兄ちゃんが首を傾げた。
その手をレンくんが引く。 
「兄さんの誕生日プレゼント用意してたの。上手く出来たから食べてみてよ」
「レンが?…ありがとう、嬉しいよ」
ちょっとびっくりしていたお兄ちゃんがへにゃっと笑った。
あんまりあたしたちには見せない顔だなあ、なんて。
あーあ、しっかり巻き込まレンカイしちゃったなぁ!
「姉さんにはオレが作ったから、後で食べような」
「本当?ありがとう、ミクオくん!嬉しいな」
ミクオくんのそれにカイコちゃんも嬉しそうに微笑む。
二組の様子を見ていたルカちゃんがふふっと笑って。
「…大成功ですわね、ミク姉様?」 
そう、柔らかくあたしに囁いた。



大好きなお兄ちゃんと、カイコちゃんの16回目の記念の日。
やってることは毎年変わらなくても、幸せそうな顔が見られるだけで良かったなぁって思ったり。
「…ま、巻き込まレンカイもたまには有りだよね」
小さくつぶやいたあたしはルカちゃんににこっと笑いかけたのだった。



あ、この後はもちろん美味しくいただきましたよ、色んな意味でね!

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