司冬ワンライ・公園/幼少に戻って

久しぶりに冬弥と共に図書館に向かった、その帰り道。
「それで、そのタイムマシンに…冬弥?」
「…え?ああ、すみません」
話をにこにこしながら聞いていた冬弥が、ふと立ち止まり、司は首を傾げる。
彼の見ている方向には、幼少期によく遊んだ公園があった。
「おお!あのときの公園か、懐かしいな!」
「そうですね」
「少し寄ってみるか」
冬弥の手を引き、公園の中に入る。
昔と変わらない…遊具が小さくなった気もするが、それは自分たちが大きくなったからだろう…それに司は少し嬉しくなった。
「まだどの遊具も残っているのだなぁ」
「ええ。…司先輩があの滑り台でショーをしてくれたんですよね」
「そうだった!その後一番良いクライマックスシーンで滑り落ちてしまって、冬弥を驚かせてしまったな」
「そうでしたね。…先輩に怪我がなくて良かったです」
小さく冬弥が笑う。
確かあの時はオリジナルのヒーロー冒険譚をやったのだ。
物語のラスト、ヒーローであるところの騎士が姫に告白するシーンで足を踏み外し、滑り台から滑り落ちてしまったのである。
結果として怪我はなかったが…物語が終わることもなかった。
キィ、とブランコが揺れる。
あの時と同じ夕焼けが広がっていた。
「冬弥!あの時と同じショーを今行っても良いだろうか!」
「…!はい、ぜひ」
冬弥が微笑む。
司は頷いて滑り台を駆けのぼった。


さあ、幼少に戻って、また始めよう。


騎士が姫を護り告白する、そんな王道ストーリーを。



いつだって、その目線の先にいるのは彼1人。


「姫!オレは君を隣で護っていきたいんだ!…共に、来てくれないだろうか!!」
「…騎士様がそう仰るなら、喜んで」

騎士の告白に、姫が微笑む…幸福終幕まで、ともに!


「!!冬弥ーっ!!」
「わっ、司先輩?!」

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