ひな祭り

今日は何の日かと問えば彼女はとたんに嫌そうな顔をした。
同じ行事でも節分はあんなに楽しそうなのに何が違うのだろう。
「…ひな祭り、だろ?…七夕とやるこたぁ変わらねぇじゃねぇか」
「内容が全然違うだろう」
「着物着てワイワイ騒ぐって点じゃ、同じだろ」
「…元も子もないことを言うな、鬼ヶ崎…!」
ブスくれる彼女に、ザクロはそう息を吐きつつ言った。
確かに似たようなもの、かもしれないが…それはそれ、これはこれ、である。
大体、うちに秘められた願いが全く違うではないか。
「俺ァお人形になるのはごめんなんだよ」
ツン、とカイコクがそっぽを向く。
こんなにもお人形さん然としている割に、彼女は着せ替え人形になるのは嫌がった。
自由奔放な彼女らしいといえばらしいのだが。
「そう言うな。更屋敷も伊奈葉も、路々森も楽しみにしているんだぞ」
「…そうかも、しんねぇけど」
他の女性陣の名前を出せば彼女はブスくれたまま黙ってしまった。
楽しみにされているのは肌で感じるらしい。
だからこそ嫌なのだろう。
「ひな祭りはまあともかく。…今日はひな祭りだけではないのだぞ、鬼ヶ崎」
「…あ?」
ザクロのそれにカイコクがきょとんとする。
何を急に、と言った顔だ。
そんな彼女の頭上にあるものを乗せる。
「まて、お前さん今何を…!」
「三月三日、耳の日でありうさぎの日でもある」
座っていた彼女はいとも簡単にザクロのベッドの上に倒れ込んだ。
げ、という顔をするカイコクにザクロは微笑んで見せる。
悪ぃ顔、と小さな声の彼女のそれを塞ぐように、ザクロはそっと口付けた。


うさ耳が揺れる。


今日はなんの日?


(日本人は、語呂合わせが大好きで、便乗商法も大好き、なんて言い訳を!)

name
email
url
comment