司冬ワンライ・キスの日/恋文の日

いつもの朝だった。
…下駄箱前で靴を履き替えるまでは。
「…これは」
上靴の上に封筒が置かれていた。
なんだろうかと手に取れば天馬司様と書かれたそれは差出人不明の手紙のようで。
「…おや、ラブレターかい?」
「おわっ?!類!」
ひょこ、とのぞき込んできたのは類だった。
何だかにこにこと楽しそうである。
「…ラブレターとは限らんだろう。果し状という可能性もある」
「…ラブレターの方がマシじゃないかい?」「すまん、オレが悪かった」
類に突っ込まれ、すぐに謝った。
果し状とラブレターならラブレターの方が幾分かはマシであろう。
「ファンレターなら嬉しかったんだがな」
はぁ、と司は息を吐く。
そんな司に、類がいつものように笑った。
「おや、ラブレターは嬉しくない?」
「好意を持たれているのは嬉しいぞ?だが、オレには恋人がいるからな」
靴を履き替え、封筒を開ける。
好きだと言われるのは良いが、司にはずっと好きな人がいる。
長年無自覚片想いだったがこの度無事に両想いになったのだ。
一生大切にすると誓ったし、その想いは増すばかりだ。
そんな恋人がいるのに、ラブレターの相手に期待させるのも拙かろう。
…と。
「…む?」
「…おや」
中身を取り出し、一読した司は固まり息を吐く。
首を傾げた類にそれをちらりと見せれば彼は笑った。
「可愛らしい恋文じゃあないか、司くん」
「…まあ、そうだな」
類のそれに司は頷き、カバンの中に入れる。
『親愛なる司先輩 本日は恋文の日ということでお手紙を差し上げました』から始まる綺麗な字。
封筒の字では気づかなかったが、これは恐らく。
自分の教室に入ろうとする類に、そんな訳だから、と笑えば彼も頷いた。
理解ある友人であったのは幸いだろう。
手紙の最後、『彼』からの謎を解明し、司は約束の場所へ向かわなければならないのだから。



「…失礼する」
カラリ、と扉を開ける。
「…!来てくださったんですか」
カウンターに座っていた彼が嬉しそうに言った。
当たり前だろう、と司は手紙を見せる。
「5月23日の謎を解き、いつもの場所でお待ちしています、などと締め括られれば行くしかあるまい?…なあ、冬弥」
そう言って司は彼…冬弥に微笑みかけた。
彼からの恋文には小さな謎が隠されていたのである。
「5月23日、恋文の日とは別にある記念日、それがどうしてもほしいとのことだが…さて」
冬弥の手を取り、するりと指を絡ませた。
先ずはどこにほしいんだ、と囁く。
「…っ、先輩」
「謎解きにはそれは書いていなかったからなぁ。冬弥は執着、愛顧、憧憬、依存、親愛…どれが欲しいんだ?」
「…司先輩から頂く『愛』ならなんでも」
ふふ、と冬弥が微笑んだ。
全く可愛らしい顔をして、と苦笑しながら司は…冬弥の○○にキスを、した。


彼が望むならなんだってしてやるさ。

恋文に想いを認めるほど、望んでくれているのだから!!


(みんなはわかったかな?


さあ、今日はなんの日??

今日は…)

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