司冬ワンライ・体育祭後夜/冷めやらぬ熱

無事に体育祭も終わり、司はごろりとベッドに横たわった。
襲うのは気持ちの良い疲労感。
ショーをするのとはまた違った熱量で臨んだそれはこれからの糧となるだろう。
「…良い、経験だったな」
自然と微笑み、司はスマホを見た。
…と。
「…電話…冬弥か」
急に鳴り出した愛しい人からの着信に身を起こし、通話ボタンをタップする。
「もしもし?冬弥か?」
『はい。遅い時間にすみません。今、大丈夫でしょうか?』
「ああ、構わないぞ!どうかしたのか?」
『いえ。…今日の応援合戦は、素晴らしいものだったと…思いまして』
柔らかい声が耳に響いた。
どこか、熱を帯びたそれに司も笑う。
「先程直接、たくさん感想をくれたのにまだ言ってくれるのか?」
『はい。伝えても、伝えきれていない気がするんです。言いたいことが次から次へと湧いてきて…。…クラスメイトからは敵チームだと何度か釘を刺されてしまいました』
「そうか。…冬弥のことも応援出来ていたなら、良かった」
司の声に冬弥が不思議そうな声を出した。
どうかしたのかと問えば彼は『先輩からはいつも応援の気持ちを頂いていますが…』と答える。
「うん?」
『ああ、でも、特別な応援、という感じはしましたね。やはり、体育祭だからでしょうか』
何やら嬉しそうな冬弥に、司も肩を揺らした。
バフン、とベッドに横たわり、思わず笑ってしまう。
なるほど、彼もまだ熱が冷めていないようだ。
『…?司先輩?』
「いや!冬弥も、体育祭を楽しめていたなら良かったと、思っただけだ」
不思議そうな彼に司はそう返す。
考えてみれば冬弥にとっては初めての体育祭なのだ。
きっと楽しくて楽しくて、眠れないのだろう。
なら、今夜はとことんまで付き合おうと思った。
何せ、司の熱も、冷めていないのだから。
「なあ冬弥。今日の楽しかったことを沢山聞かせてくれ。お前が楽しいと思ったその感情を、オレも共有したい」
『…!…はい、是非』
嬉しそうな冬弥の声が耳に響く。

文化祭には後夜祭があるというのに、体育祭にはないなんて、そんなこともないだろう?

年に一度の体育祭はまだまだこれからだ。



『ところで、玉入れがあんなに難しいとは思わず…。…やはり俺は』
「玉入れは案外難しいぞ?!それに、冬弥は初めてだからな!!」

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