七夕

七夕は夏のバレンタイン、とは誰が言い出したのだろうか。
「…くだらねェ…」
頬杖をつきながら彼女がそう言う。
行儀が悪いと窘めながらも発言自体は否定しなかった。
ちなみにザクロも同意見である。
「そんなら、ハロウィンは秋のバレンタインかい?」
「…どちらかと言えば、ポッキーの日じゃないか?」
馬鹿にしたようなそれにザクロは真面目に返した。
確かに恋人たちが楽しくしているのはハロウィンもそうだろうが、ポッキーの日の方がチョコレートも使っているしバレンタインに近しいだろう。
そう思った発言だったのだがカイコクが余計に嫌そうな顔をした。
女子、である割にそういう行事をあまり好ましく思っていない彼女らしい反応といえばそうなのだろうけど。
「別に構わないだろう、貴様には関係ないのだし」
「…関係ない、ならな」
はぁ、とカイコクが息を吐く。
不思議に思って首を傾げれば、ん、と短冊を渡された。
「は?おい、鬼ヶ崎!」
「関係ねェとは言わせねェぞ、なぁ…ザクロくん?」
ひら、と手を振る彼女はポニーテールを揺らして立ち去る。
慌てて短冊を見ればそこには「忍霧の願いが叶いますように」の文字があった。
ザクロの願いはただ一つ、鬼ヶ崎カイコクといつまでも共にいられますように、だ。
彼女がその願いを知っていてこれを渡したのだとしたら。
マスクの下の口角が上がる。
まったく…彼女は素直ではないのだから!
「待て、鬼ヶ崎!!」
彼女が去った先を追いかける。
ザクロたちの七夕は、これからだ。



いつもより彼女が素直になる日。

今日は夏のバレンタイン!


(年がら年中イチャイチャしてるなんて、野暮なことは言わないお約束だよ?)

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