リンレン1

「ねぇねぇレンー!これで大丈夫かなぁあ?!」
「…大丈夫だって…。…っつかこの質問何回目だよ…」
ぶんぶんとおれの服を振り回すリンに息を吐きながらそう返す。
つうか、ライブ衣装なんだからやめてくんないですかね?
「だってだって!14周年ライブだよ?!ニ人きりだよ?!!」
「けど、リハもしたじゃん」
「しーたーけーどー!!」
わぁあん!と騒ぐリン…気持ちは分かるけどさぁ。
まさかの14周年ライブをする、と発表からグッズが出てテーマソングも決まってまあ怒涛だった。
おれもリンも練習に撮影に物凄く忙しかったし。
ちょっとでも良い物にしたかったしな。
「あたしでも不安になるもん…」
「…あの、鏡音リンが?」
「レンは鏡音リンをなんだと思ってるの???」
ブスくれるリンを揶揄ればジャーマンスープレックスをかけようとしてくる。
ライブ前に無駄な体力使うなよな!!
「あら、賑やかねぇ」
「やほー、初音さん参上!」
楽しそうな声に振り向けばひらひらと手を振るメイ姉ぇとミク姉ぇがいた。
良かった、助かった!
「メイ姉ぇ!ミク姉ぇ!」
ぱあっとリンの表情が明るくなる。
「二人が来てくれて良かったよー!」
「…本当に、良かった…」
「リンはともかく…レンはなんでそんなに疲れているの?」
嬉しそうに駆け寄るリンを抱き止めながらメイ姉ぇが聞いてきた。
そこについては触れないでいてくれると有り難いかなぁ…!
「いや、まあ…ちょっと色々」
言葉を濁せば、そう?と笑ったメイ姉ぇはそのままその話題を引っ込めてくれた。
流石は我が家の長女。
よくわかっていらっしゃる!
「…ちゃんと謝らないとだめだよ?レンくん」
こっそり囁いてくるミク姉ぇとは格が違いますよね!なんて思いながら曖昧に頷く。
まあ事実だしな。
「悪かったよ、リン」
「あははっ、別に怒ってないよー。あたしも、自分がライブ前に不安になるなんて知らなかったし!」
からからと笑うリンにホッとしていれば、あら、とメイ姉ぇが笑った。
「ちゃんと不安になるのは良いことよ。それだけ素敵なライブにしたいってことだし!」
「そうそう!あたしも未だに不安になるしー」
ミク姉ぇにそう言われて二人して目を丸くする。
あの、世界的な電子の歌姫であるミク姉ぇが?
「ミク姉ぇでも不安になるの?」
「そりゃあなるよー。初音さんをなんだと思ってるの」
「初音さん、ライブめっっっちゃやってんのに?」
「めっっっちゃやってるからこそ不安になるんだよ?新しい人はどうかなぁとか、昔から聴きに来てくれる人は今回も楽しんでくれたかなぁとか!完璧なものをお届けしたいけどもっとこうすれば良かった、とかは必ずあるし。だから、ベストは尽くすけど改善点は必ずあるんだよ。なかったらそれはそれで止まっちゃうからね」
えっへん!と胸を張るミク姉ぇ…やっぱりこういうトコ、世界の、電子の歌姫なんだなって思う。 
「ミク姉ぇが先輩みたいなこと言ってるぅ…」
「本当ねぇ…」
「リンちゃんもお姉ちゃんも初音さんをなんだと思ってるの???」
「こういう時は真面目だよな、ミク姉ぇは」
「レンくんまで!!」
もー!と怒るミク姉ぇに、みんなで笑った。
「ふふ。…でも、これは二人にしか出来ないことなのよ?二人なら出来るってみんなが思ってくれているんだから、きっと大丈夫」
メイ姉ぇがパチン、とウインクする。
うん、何か大丈夫な気がしてきたな。
気にしてないつもりでも、おれも緊張してたらしい。
「まあ、パワフル元気が二人の持ち味なんだから、思いっきり楽しんでらっしゃい」
「リンちゃんもレンくんも、頑張って!会場のみんなが待ってるよ!」
トン、とそれぞれから背中を押される。
先輩が、こんなに頼もしい先輩が見守ってくれるんだから、きっと大丈夫だ。
隣のリンを見てニッと笑う。
リンもおれを見て笑いながら手を繋いできた。
「楽しもうね、レン!」
「おう、思いっきりやろうな、リン!」

カウントダウンが始まる。


さぁ、ライブはもうすぐ!!

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