貴方と二人、愛の味。

「ケン兄、ラーメンの作り方教えて」
「?別にいいけど…」
可愛い弟が急にそんなことを言ってきて、ケンヤは頷きつつ首を傾げた。
ラーメンの作り方くらい、シンヤはお手の物だろうに。
「言っとくけど、普通のインスタントだぞ?チャーシューも出来合いだし」
「良いよ」
真面目に、エプロンとメモ帳を持って真剣に頷くからケンヤは可笑しくなってしまった。
何をそんなに真面目なのだか。
ケンヤも、それからアンヤだってそんなに真面目ではないのになぁ、と思いながらケンヤは立ち上がり、キッチンに行く。
「シンヤ、鍋出して」
「え?」
「え、じゃねぇよ。お前も手伝うの」
きょとんとするシンヤに、ケンヤは笑いかけた。
こういうのは実践が一番良い。
「…!うん!」
慌てたようにメモ帳を置き、こちらにやってきたシンヤは片手鍋を取り出した。
「まず、水を張って湯を沸かしてる間に袋麺を開けるだろ。…シンヤ、がっつり食う?」
「うん、食べる」
「おっけ、じゃあ2袋な。お湯が沸く前に野菜切っとくか」
「…俺、白菜が良い」
「んー」
サクサクと準備を済ませ、沸いたお湯に白菜と麺を入れる。
「解れたら麺は取り出す。シンヤ、お椀」
「はい、ケン兄」
端的な支持にもさっと応えるシンヤにケンヤはニッと笑った。
麺と白菜を茹でたお湯にスープの元、生卵、チャーシューを入れ、生卵がポーチドエッグ状になれば完成である。
「…ほい、お待ち」
「…!」
トン、とお椀を置いてやればシンヤは凄く嬉しそうな顔をした。
食べて良いかと表情で聞くから苦笑しつつ促す。
「いただきます…!」
「ん、どーぞ」
はふ、と小さな口で頬張る彼を見つつ、ケンヤも箸を持ち麺を啜った。
「…不思議」
「んあ?何が」
小さな声に首を傾げれば、シンヤも首を傾げる。
「同じように作ってるのにケン兄に作ってもらった方が美味しい、から」
心底不思議そうな彼に思わずふは、と笑った。
まったく、可愛いことを言うのだから!
「そりゃあ、まあ、お前」
チャーシューをシンヤのお椀に入れてやりながらケンヤは笑う。
愛しき、弟に向かって。


「お兄様の愛情を舐めんなよ?」


(可愛い可愛いシンヤに、愛情という名のスパイスを!)

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