司冬ワンライ・仮装/ハロウィンイブ

「…よし、こんなものだな!」
司は机の上を眺め、こくりと頷いた。
明日はハロウィンである。
司がショーキャストを勤めるフェニックスワンダーランドではキャストが仮装して子どもたちにお菓子を配る、というイベントがあるのだ。
せっかくのハロウィンだ、準備は万端にして当日は楽しんでほしいと最後まで確認していたのである。
「…司先輩」
「…ん、おお、冬弥!」
ひょこ、と顔を見せたのは後輩であり恋人でもある冬弥だった。
何故こんなところに、と駆け寄ると「…入り口近くにいたところを、鳳さんが入れてくれたんです」と少し困ったように笑む。
「ああ、なるほど…。…で、そのえむはどこに行ったんだ?」
「神代先輩と草薙に呼ばれてそちらに」
「そうだったのか、振り回してすまないな」
「いえ。俺の方こそお仕事中にすみません」
「何をいう!オレと一緒に帰りたかったのだろう?嬉しいぞ!」
高らかに笑い、司はそう言った。
実は少し前に『今日お時間ありますか?一緒に帰りたいのですが…』とメッセージが来たのである。
「着替えたらもう帰ることが出来るから、少し待っていてくれ」
「わかりました」
頷いた冬弥が少し目を細めた。
「…司先輩のそれは…」
「ん?ああ、騎士だ!格好良いだろう?!」
冬弥のそれに司は胸を張り、衣装を見せる。
ひらりと揺れる白のケープとコートテール。
腰辺りの百合の花は流石にやり過ぎではと思うがこれが着てみればあまり気にならないから不思議だ。
「はい、とても」
「そうだろうそうだろう!…冬弥はこれなど似合うのではないか?」
柔らかい笑みの冬弥に頷いた司は箱の中に入れていた衣装から猫耳を取り出しつけてみる。
思ったより似合っていて少しどきりとしてしまった。
「…似合いますか?」
小さく微笑んだ冬弥に少し言葉が詰まる。
「あの、先輩?」
「…ああ、似合い過ぎて誰にも見せたくなくなってしまったな」
「…!」
冬弥が驚いたように目を丸くしてからふにゃりと笑った。

明日はハロウィン。

イブの今日は、可愛い彼を独り占めできる…そんな日。


「冬弥くん、一人にしてごめんねー!…あー!猫さんだぁ!凄く可愛いね!ねぇ、明日一緒にハロウィンやらない?」
「…え?」
「こら、えむ!!」

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