司冬ワンライ/文化祭・浮きたつ気持ち

日差しが気持ち良い季節。

みんなの笑顔がきらきらと輝く。


今日は待ちに待った文化祭、だ。



「…司先輩!」
「ん?おお!冬弥!」
劇の最終確認をしていた司はふと窓際から呼ばれ顔を上げる。
嬉しそうな顔をしてこちらを見ていたのは冬弥だ。
クラスで作ったらしいTシャツを身にまとう様子はいつもとは違うのに何だかとてもしっくりきた。
「クラスTシャツか?似合うな」
「ありがとうございます。司先輩は…」
「ああ、オレの方は劇の衣装だ!格好良いだろう?!」
「はい、とても」
冬弥がにこにこと褒めてくれる。
いつも素直に言葉をくれるが、どうも今日は特に浮き足立っているらしい。
きっと中学などでは経験してこなかったのだろう。
みんなで作り上げる行事の楽しさ、の前に冬弥は普段より感情が分かりやすかった。
「冬弥のところは綿飴屋だったか?」
「はい。くまさんがうまく作れるようになったんです」
「そうか!!冬弥は器用だからなぁ」
優しく笑う冬弥は、何だか綿飴よりふわふわしていて、司も嬉しくなる。
きっと、この瞬間がとても楽しいのだろうと。
学校生活を楽しめなかった冬弥だからこそ、沢山楽しんでほしいと、純粋にそう思った。
「そうでしょうか…」
「もちろんだとも!そういうのも才能だぞ?」
「…!ありがとうございます」
「劇が始まるまで時間があるから、後で買いに行くな」
「はい、お待ちしています」
頷いた冬弥を引き寄せ、周りにバレないようにキスをする。
少し驚いた表情をした冬弥がほんのり頬を赤く染めた。
「…青柳ー!ちょっとー!」
「っ!あ、ああ!…では、司先輩。また後程」
「ああ、またな!」
クラスメイトから呼ばれた冬弥が慌てたようにパタパタと去っていく。
それを手を振って見送っていた司は小さく息を吐いた。
楽しみにしてます、と言ってくれた冬弥の為にも頑張らなくては、と。
(…それにしても)
独りごち、司は思わず笑ってしまった。
あんなことをしてしまうくらいには、司も文化祭に浮き立っているらしい!!


(文化祭マジックは本当にあるのかもしれないね?)



「…司、これ青柳くんから…」
「こっ、これは…!フォレスタンベアー1世ではないか!!とてつもない愛を感じるぞ、冬弥!!」

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