ザクカイ♀エイプリルフール

「忍霧!忍霧!!」
「…なんだ、鬼ヶさ…」
楽しそうなカイコクの声にザクロは迷惑そうにふり仰ぐ。
この状態の彼女に良いことなんてないのだ。
「実はな、路々さんと付き合うことになった!」
「へぇ、路々森と…。…は?」
カイコクの思いがけないそれに、ザクロはスルーしかけて眉を顰める。
何を言っているのだろう、彼女は。
カイコクの隣を見れば確かに手を繋いだユズがいた。
睨めばユズが繋いでいない方でひらひらと手を振っており、ただただ巻き込まれたのだろうなぁと知る。
まあ彼女の場合、面白そうだと乗ることも多いのだけれど。
では何故こんな事を言い出したのか。
答えはかんたん、エイプリルフールだからだ。
既に本日嘘を吐かれていたザクロはすぐに分かった。
が、それとこれとは話が別である。
カイコクにとっては取るに足らないそれ、なのだろう。
だがザクロにとっては違う。
…それが単なる嫉妬だとしても、だ。
え、という表情の、カイコクの手を取りユズにいつも通り声をかけた。
「…路々森。少し『カノジョ』を借りても良いだろうか?」
「へ?え??忍霧??」
「ボクは構わないよ?…今日が終わるまでに返してくれたら、ね」
「…善処はしよう」
へらりと笑うユズに、ザクロは淡々とそう返す。
取った彼女の手を引いて、部屋を出る。


「…ま、自業自得かにゃあ…」
ユズが小さく笑ったのなんて、気付かずに。



なぁ、鬼ヶ崎。
エイプリルフールに吐く嘘は、相手が傷付かない嘘だけなんだ。


そう囁いたザクロと、目を見開いたカイコクの行方は…巻き込まれたユズですら…知らない。


(エイプリルフールの嘘にはくれぐれもご注意を!)

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