鬱的花言葉で1日1題・岩坂(西洋水引・鳩彼SSS

「坂咲君は卒業したらどうするおつもりで?」
棚の薬ビンの数を数えていた坂咲君にそう問いかけると彼は怪訝そうに振り向いた。
「・・・なんです?いきなり」
「いえ。貴方も三年生なのですから、進路の事は考えておくべきでしょう?」
「・・・まあ・・・そうですけど」
かたり、とガラスの戸を閉めて彼はふっと微笑む。
「まだ詳しく考えていませんよ。・・・まあ、大学だけは行こうと思ってますけどね?」
「大学ですか。貴方は頭はいいのですから今から受験を考えても構わないと思いますよ」
「褒められてます?それ」
くすくす、と彼がおかしそうに笑った。
そうだ、彼は頭がいい。
こう私に言っているそれも真実かは分からない、彼はそういう鳥だった。

・・・ですが、頭がいい鳥ほど、利用されやすいのですよ。
貴方もそうでしょう?坂咲君。

「私が無闇に褒めたりしない事は貴方が一番良くご存知のはずですが」
「ふふ。自分で言いますか、それ」
「ええ」
性格悪いなぁ、と彼が肩を揺らせながら笑った。
「性格悪いついでにもう一つ。坂咲君、教師になられては如何です。・・・私の様に」
「やだなぁ先生。・・・本気で言ってます?」
にこ、と彼が・・・目の奥が笑っていない微笑を見せる。
「ええ、私は本気ですよ」
そんな彼に私も笑ってみせた。
彼が私を調査している事は知っていた。
そしてそれに関する『良い結果』が出ていないことも。
もし私がこの学園を出て、違うところに行くとしても彼はきっとついてくる。
それが彼の仕事であるから。


なら、此処で終わらせて差し上げましょう。
貴方の誇り高き仕事に終止符を。
・・・そして、私の元で飼い殺しにしてあげますよ。
私を追う貴方にとっては願ったり叶ったりではありませんか。
ずっと私の傍にいるのですから・・・ね。
違いますか、坂咲君。
「・・・。先生?」
笑みを浮かべて首を傾げる彼に、私は小さく笑いかけた。




この案件に結果が出ない限り、貴方は私を追い続ける


きっと、きっとどこまでも



影の様に、貴方が私から離れないのならば囲ってしまえばいい


貴方にとっては不都合かもしれませんが、私には好都合なのですよ


「坂咲君」
「なんです?岩峰先生」


・・・私だけを映す、アクアブルーの眸に絶望を





貴方に相応しい花を捧げましょう

私を追うスパイの貴方に、一輪の



「少しお話があるのですが・・・ー」
ーー
岩坂・どこまでも離れない

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