鬱的花言葉で1日1題2章・イチウリ(ヒーザー/赤の鳳仙花・鰤SSS

お互いに一人ぼっちだった。


それゆえに惹かれた。

言えばそうかもしれない。



「僕に触れるな」
石田に触れようとした瞬間、一切の視線も向けられずにそう言われた。
「石田ぁ」
「邪魔」
にべもなく投げつけられた言葉に思わず引きつる。
邪魔って、こいつは・・・。
「それはねぇんじゃねぇの?」
「煩いなぁ」
頭を撫でようとしたところで避けられた。
いつも厳しいやつだけど今日は特に厳しいな・・・。
「なぁって」
「・・・。聞くけど」
ややあって石田が振り向いた。
「君はどうして僕に触れようとする?」
「は?」
「答えろ」
分厚い本を閉じて石田が立ち上がる。
どうして、って言われてもな・・・。
「特に理由とかねぇよ」
「つまり、君が触れたいから触れる、そういうことか?」
「ま、まあな」
しどろもどろに言うと、石田はじろりと俺を見て。
「自分勝手、横暴、クズ」
「・・・てめぇ!」
吐き捨てられるそれに俺は思わず立ち上がった。
こいつ・・・悪口言いたいだけじゃねぇか!
「おま、さっきから黙って聞いてりゃ好き放題・・・!」
「いいかい、黒崎。よく聞け」
詰め寄る俺に、石田がずいと顔を近づける。
なまじ綺麗な顔をしてる・・・それに俺は、弱い。
仕方がなく口をつぐんだ。
・・・珍しく真剣っぽいし、な。
「僕は孤独だ。今更それは変えられない」
行き成り言われたそれに俺はぽかんとする。
孤独?
何、言って・・・。
「石・・・」
「黙って聞け」
むす、と石田が俺を遮った。
「滅却師とはそういうものだよ。仲間では行動しない。いつも一人だ。それが普通なんだ。・・・それを、君は・・・!」
石田が俺を見上げながら睨む。
「触れてみたいから手を伸ばす?そういうところが嫌いなんだよ、僕は!」
「・・・」
「ずっと一人だった。あの時から・・・師匠が亡くなってから、ずっと。・・・それなのに」
言葉を紡ぐ石田は何処か泣きそうな顔をしていた。
「・・・今更、優しくされても困る。君には、触れられない。だって」
君に依存してしまう、と小さく言う石田に手を伸ばす。
「君に、死神に依存するという事がどういうことだか分かるか?」
真剣な表情に思わず手を止めた。
滅却師が死神に依存するという事、それは。
「・・・世界の、崩壊」
「そう。例えば僕が君に拠り所を見つけてしまったら。・・・僕は君を守るために必死になる。君もそう。虚のいない世界を創ろうと躍起になってしまう」
訥々と語られるそれは、ありえなくもない未来だった。
パワーバランスの崩れた世界が・・・死神と滅却師が手を取り合った世界がどんなに悲惨かを、俺たちは知ってる。
だからこそ。

「僕に触れるな!!」
石田が怒鳴る。
今度は構わずに手を伸ばす。
・・・今、触れてしまわないとダメな気がして。
「黒・・・!!」
「いいじゃん、依存しろよ俺に」
「・・・なんで、君はそう・・・」
呆れた声の石田を抱き寄せる。
ずっと孤独に耐えてきたんだろ?
ならいいじゃん。
例えそれが世界の崩壊になるとしても。
俺がお前を護るから。



孤独に耐えなくてもいい


一緒に生きよう



例え滅却師と死神の共存が無理だと分かっていても



お前とならいけるような気がするんだ


(そこは絶望しかない未来)


ーー
イチウリ・孤独/私に触れないで

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