そんな格好しているお前が悪い(へし燭SSS

なんだ、これは。
目の前にいる黒い物体に抱いた感想がそれだった。
長谷部は多分それを「知っている」
しかし現実を認めたくはなかった。
はあと溜息を吐くと、あれ?とのほほんとした声でそれが振り仰ぐ。
「ああ、長谷部君」
「・・・何をしているんだ、燭台切」
黒い物体こと、床に這いつくばる燭台切光忠に疑問をぶつけた。
へにゃと笑みを見せて彼が言うには「棚の下に物が入り込んでしまったんだ」ということらしい。
一生懸命になっているうちにこの体制になったようだ。
何をやっているのだか。
「長谷部君の方が腕細いから入るかなぁ」
「なぜ俺がそんな無様な恰好を晒さねばならん」
「いや、そうなんだ、け・・・ど?!」
言いながら光忠がびくりと背を跳ねさせる。
「ちょっと、長谷部君?!」
「ああ、すまん」
睨まれて長谷部はにやりと笑った。
足の裏に指を滑らせただけだが彼はくすぐったかったようだ。
「何が不満だ?これか?」
「ひゃう?!も、や、め・・・!」
つう、と何度も滑らせていればぶんっと足を振り上げられる。
振り下ろされる威力を長谷部は知っていたから身体を移動させて。
「ちょ、っと・・・君」
嫌そうな顔で振り仰ぐ光忠が睨む。
「さっきから何処を見ているのかな?長谷部君?」
「さあ?何処だろうな?」
くっくと笑い、捻じる彼の躰を押さえつけ長谷部は・・・光忠の尻をがしりと掴んだ。
そのまま思い切り揉みしだく。
「ぅあんっ、ちょ、やめ、や・・・」
起き上がり手を伸ばそうとする彼を避け、足で抵抗しようとするのも躱し揉み続けた。
「ふぅ・・・あ・・・っい、かげに・・・しろ・・・っへし切長谷部!!!!」
急に怒鳴られ、長谷部はびくりと手を離す。
やばいと思った時には彼の顔が怒っていた。
・・・そういう方向に雪崩れ込めるかと思ったがそうはいかなかったらしい。
「僕嫌だって言ってるよね?!」
「いや、お前」
「何」
ぎろりと光忠が睨んだ。
浮かんだ言い訳を必死に打ち消し、この後どうやって機嫌を直してもらえるかと長谷部は必死に考えを巡らせる。


・・・長谷部が光忠の機嫌をどう取ったのかはまた別の話。

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