魔法(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

「魔法が使えるとしたらどんなものがいい?」
光忠が笑う。
唐突な質問だなと思ったが彼は一冊の本を持っていた。
「・・・。・・・お前はどんなものが良いんだ」
「僕?僕はね、箱の中に入れたら食べ物が温まったり凍ったものが溶けたりするのがいいかな!!」
にこにこしながら光忠が言う。
彼が言うそれは電子れんじと言うのではないかと思ったがそれについての熱い話を聞かされると思った長谷部はそっと黙った。
余り自分から地雷を踏むものではない。
「長谷部君は?」
「・・・そうだな・・・」
問い掛けられるそれに長谷部は少し上を向いた。


思い出されるのは、ある一つの出来事。



「光忠」
「?なんでしょうか」
首を傾げて寄ってきたのは藤の目を持つ、黒髪の少年。
まだ号の無い光忠だった。
大太刀である長谷部国重は不思議そうな顔で見上げる光忠を膝の上に抱き上げよく見ていろと手を握る。
「国重様?」
首を傾げた光忠に笑って見せ、握った手を開いた。
溢れんばかりの小さな砂糖菓子が現れる。
「!!!どうやったのですか?!」
「さあな」
驚いた表情の光忠に小さく笑い、その砂糖菓子を口に入れてやった。
「ん!・・・甘い」
「金平糖、というらしい」
「こん、ぺいとう」
小さく呟いた光忠が嬉しそうに笑う。
「国重様は凄いですね!」
綺麗な顔で無邪気に国重を褒める小さな少年。
胸元から小瓶を出し、ざらりと金平糖を入れる。
一粒だけを残し、光忠の手に握らせた。
小さな手を包む様に握り、もう一度開く。
「あ、消えた!」
「不可思議か」
「はい。・・・どうやってやるのですか?」
「知りたいか」
振り仰ぐ彼に笑いかけた。
はい、ともう一度頷く彼に「ただでは教えられんな」と言う。
少し考えた様子を見せた彼は伸びあがり、頬に触れるだけの口付けをした。
可愛らしい報酬に国重は笑う。
瓶を傾け、国重は小さな手に置いた。


魔法と言う、理解できないものがあるらしい。

国重がやって見せたようなものではない、それ。


数千年経ち、世間では魔法と、呼ぶらしい。

こんな風に、彼を消したり出来ればと思う。



付喪神が使う、人事を越えた魔法を、人は・・・。

(神隠しと、そう呼ばれる)

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