くりみつ

秋の気色漂うある晴れた日。
大倶利伽羅は落ち葉がひらひらと舞う木の下でぼんやりと佇んでいた。
時折ひょこりと身を乗り出してはすぐに引っ込める。
何回か繰り返した後、目の前から歩いてくる眼帯の青年に手を小さく上げた。
驚いたように立ち止まる彼・・・燭台切光忠に大倶利伽羅は歩み寄る。
「大倶利伽羅。どうかした?」
きょとりと目を瞬かせる光忠に大倶利伽羅は何でもない様に告げた。
「遅いから迎えに来た」
「・・・あれ?そうなの?」
そんなに遅いかなぁ、と言いながら慌てる彼が可愛い。
光忠は短刀ではなく寧ろ太刀と言う部類だが、おっとりとした彼は可愛いと表現するのが妥当だろう、と思う。
「ついでに追加の買い物して来いと」
「追加?」
「ああ。食後の甘味を買って来いとのことだ」
こてりと首を傾げる光忠に主からの紙を見せた。
それに目を滑らせた光忠は小さく笑って「了解」と言う。
「付き合ってくれる?大倶利伽羅」
「構わん」
「ありがとう」
にこり、と光忠が笑う。
ただそれだけでとても嬉しくなった。




「ええと、短刀たちはゼリーで、打刀の皆はケーキで・・・」
「早くしろ」
「急かすなら大倶利伽羅も選ぶの手伝ってくれるかい?」
むっとした表情で光忠が振り向く。
商品にばかり気が行っている所為であまりにつまらないから声を掛けただけなのだけれども。
「全員同じではいけないのか」
「まあ、そうなんだけど・・・っと、大倶利伽羅?」
籠を取り上げ、その中の商品を全て戻し彼の手を引く。
戸惑う光忠を無視し、大倶利伽羅は籠の中に枝豆、砂糖、白玉粉を入れた。
「え?ええ??」
「帰るぞ」
「待って、ちょ、っと・・・!!」
「俺は」
抗議しかける光忠の方を向き、大倶利伽羅は口を開く。
「アンタの作る物の方が好きなものでね」
「・・・それ、って」
「会計を済ませてくる。・・・先出てろ」
ぽかんとして固まる彼を置いて会計に向かう。
それを済ませて外に出ると手持ち無沙汰な様子で佇んでいた光忠がこちらを見てにこっと笑った。
「待たせた」
「ん。・・・じゃあ帰ろうか」
穏やかな様子で笑う光忠を見つめる。
彼の、秋の空と同じ色の目がふわりと溶けた。
何?と無防備な表情で首を傾げる光忠。
「何でもない」
不思議そうな彼にそう返し、手を握る。
「大倶利伽羅?」
「たまにはいいだろう」
驚いた表情の彼に言えば「うん」と小さく頷いて握り返してきた。
ふわりと心が温かくなる。
「ずんだ、作るの手伝ってくれよ?」
「ああ」
くすくすと笑う光忠は・・・言葉には出さないが可愛いなと、そう思った。






同じ空の下



彼と共に



皆の待つ本丸に戻る



これをきっとこう呼ぶんだろう





日常的幸福(いつものしあわせ)、と

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