遠征(へし燭SSS・ワンドロお題)

「今日の遠征内容は木炭150、玉鋼200、冷却材200、砥石250を持ち帰る、以上だ」
長谷部が指示書を読み上げれば、各々の返事が返って来た。
適当に人数を振り分け、見送り、後ろを振り返る。
「俺たちも行くぞ、燭台切」
「了解」
くすりと光忠が笑んだ。
本来、部隊は揃って遠征を行わなければならない。
しかし、それでは効率が悪いと長谷部が率いる部隊はこの方法をとっているのだった。
同じ隊の大和守に頼まれたから、というのもあるのだけれど。
大体二人組になり、大量に落ちていそうなところに向かう。
そうして時間になれば集合し、揃って帰るのだ。
「そういえば最近は遠征ばかりだね」
「不満か?」
光忠のそれに長谷部が返せば、まさかと彼が笑う。
「主のいう事に不満はないよ。・・・君とこうしてゆっくり出来るし」
「これは任務だぞ」
嬉しそうな光忠に長谷部はそう言ったが、それは長谷部も同じだった。
本丸に帰ればそれなりにお互い忙しく、最近では顔を合わせる暇もない。
だからこうして無理矢理時間を作り、二人きりになれるようにしたのだ。
「分かってるよ。・・・あ、木炭」
「でかした」
光忠の声に長谷部は袋を広げる。
二人で他愛もない話をしながら歩き回り、素材を見つけては袋に入れた。
そんな作業を何時間か続け、袋がいっぱいになった・・・そんな折。
「・・・長谷部くん、あれ」
「うん?」
光忠が一点を指さす。
それに目を凝らすと一羽の鳩が文を携えて降りてきた。
「鳩?」
「・・・これに集めた素材を入れろという事らしい」
「ふうん?急ぎかな」
政府からそんな鳩が派遣されたのは聞いていたからそれかと光忠そう言いつつ集めたそれを入れる。
「・・・それから」
「うん?」
文を見せ、長谷部は笑った。
「主は御見通しらしいぞ」
「え?」
きょとんとする光忠は文を見・・・少し照れたように笑う。
文には『たまにはゆっくりしておいで』と書かれていた。
その下にはここから程近くの茶屋の地図がある。
其処へ行けという事だろう。


「行くか」
「うん」

これもまた遠征だと、笑って。

二人は手を取り、足を進める。


鳩がそんな二人を見てから、飛び去った。

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