バレンタイン大作戦(光忠♀ワンドロ・アイドル長谷部×アイドル光忠♀

愛する人から貰いたい


甘いあまいチョコレート


『わぁ!甘くて美味しそう!』
『ふふ、つまみ食いはダメだよ』
画面の中できゃっきゃとやりとりが繰り広げられている。
その画面をじぃっと見つめているのは日本を代表する男性アイドルグループの長谷部だ。
「はーせべさー・・・うわっ」
引いた声を上げるその人に胡乱気な目を向ける。
「なんだ。大和守」
「なんだ、じゃないですよ。何してるんです?」
呆れたような、同じグループの安定に見ていたスマフォの画面を見せた。
「・・・清光と光忠さんの料理番組?」
きょとんとする安定。
長谷部が見ていたのは長谷部たちと時を同じくしてデビューした女性アイドルグループの清光と光忠が担当している料理番組だった。
今日はバレンタインも近いという事からチョコレートを作っているらしい。
『これで好きな人のハート鷲掴みだね!』
『みんなも、大切な人に向けて作ってみてね』
画面の二人はラッピングを終え、手を振っていた。
タップし、視聴を終える。
「光忠は俺に作ってこんが?!!」
「知りませんよ!」
机を叩く長谷部に安定が怒鳴り返してきた。
ちなみにこの長谷部と光忠、世間からも公認のカップルである。
「何故だ、光忠がこの俺にチョコレートを送ってこないとは・・・」
「そもそも普通にもらえると思っていることが驚きですけどね」
頭を抱える長谷部に安定が言った。
「いや、日的にまだ先だからか?しかしあの光忠のことだ、今くらいから用意していても・・・」
「長谷部さん」
ぶつぶつと持論を展開する長谷部に安定が呆れた声を出す。
「考えている暇があるなら本人に聞けばいいんじゃないですか?」
「・・・。・・・ああ、そうだな」
「なーんて・・・え?」
ゆらりと立ち上がった長谷部に安定がぎょっとした表情をした。
他のメンバーがなんだなんだと顔を出す。
「光忠の所に行ってくる」
「・・・っおい、長谷部!」
「・・・安定くん何したの?」
「僕の所為じゃないけど?!」
ぎゃーぎゃーと言う声を無視して長谷部は戸を閉めた。
そうだ、気になるなら本人に聞けばいいのだ。
「光忠ァ!!」
「あれ、長谷部くん」
勢いよく楽屋の戸を開ける。
そこには、きょと、とした表情を見せる光忠だけがいた。
他のメンバーがいないのは都合がいい。
「珍しいねー。長谷部くんが僕の楽屋に来るなんて」
にこにこと言う光忠は新曲PVの撮影だったのだろう、短い制服風のスカートに零れ落ちそうな胸を強調させる白いプルオーバーといういで立ちだった。
「みっちゃん、先出るよー」
「あーうん、ごめんねー」
廊下にいたのだろう他のメンバーに声をかけ、それから長谷部にこてりと首を傾げて見せる。
「それで、どうしたんだい?」
「・・・ああ」
頷いて見せたが・・・ここに来てひどく後悔していた。
チョコレート一つでなにを意固地になっていたのだろう。
「・・・いや、まあ・・・なんだ。今日のOA見たぞ」
「え、本当?!」
ぱ!と長谷部の言葉に顔を輝かせる光忠。
光忠は純粋に長谷部が自分の出ている番組を見ていたのがうれしかったらしい。
「あのチョコ、良く出来たんだぁ。もうみんなで食べちゃったけど」
「そ、そうか」
ふわふわと言う光忠に長谷部は相槌を打った。
食べた、ということは自分の分は用意してないという事だろうか。
・・・流石に忘れているという事はないだろうと思うのだけど。
と。
あ、と光忠が声を出す。
「これ、番組とは関係ないんだけど・・・」
バッグをごそごそと探り、小さな包みを取り出した。
おずおずと差し出して来る。
「これは?」
「・・・。わかるだろう?」
むくれる光忠に思わず嬉しさで顔が崩れた。
やはり光忠は用意してくれていた・・・と。
ポーカーフェイスを必死に保つ。
「え、えと・・・受け取ってくれる?」
首を傾ける光忠の差し出す手事掴み自分の腕の中に閉じ込めた。
「わわっ、長谷部くん?!」
「いいだろう。お前事受け取ってやる。・・・今夜は離さんぞ?」
「そ、そこまで言ってな・・・!んんぅ!!!」
びく!と身体を震わせる光忠に口付ける。


チョコレートの様に甘い日々を、貴女と


「ねえ、清光。あの料理番組さあー?」
「ん?ああ、あれ。あれね、光忠ちゃん発案の企画なんだよー」
「・・・ああ、通りで」

(バレンタイン大作戦にまんまと嵌った男の話)

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