ねがいごと(ねんへし燭SSS・ワンドロお題)

笹の葉さらさら 軒場に揺れる
お星さま きらきら
金銀砂子




「…何だこれは」
自室に入って広がっていた光景に俺は目を見開いた。
「長谷部くん?どうかし…うわっ」
ひょこりと光忠が俺の後ろから顔を出し、同じように目を見開く。
「なんだ?ふたりして」
きょとんとするのはねんとねん光だ。
部屋の真ん中には大和守安定の羽織が広げておいてあり、その上には金平糖がばら蒔かれていた。
「何だ、じゃない、何だこの惨状は!」
「むっ、ちらかしているわけじゃないぞ?」
怒鳴る俺にねんが得意気な様子を見せる。
「え?天の川を作ってる?」
驚いたような光忠の声。
どうやらねん光が説明をしたらしい。
天の川??
「もうすぐたなばただろう」
疑問符を浮かべる俺にねんが言う。
そういえばそんな行事があった気がするな。
「七夕は別に天の川を渡る行事じゃないよ?」
「?!そうなのか?!」
光忠の言葉にねんたちは驚き顔だ。
知らずにやったのか…まったく。
「短冊に願い事を書いて笹に吊るすと願いが叶うんだよ」
ふわりと光忠が笑う。
ぱあ、と目を輝かせたねん光が何かを囁いた。
「そっか、叶うと良いね」
見た目に幸せそうな光景に頬が緩む。
「みつ?」
「ふふ。ねんへしくんとずっと一緒に居られますようにって」
光忠のそれにねんは呆れた顔をした。
「そんなもの、ねがわなくともかなえてやる」
「…!」
ねん光の頬が赤く染まる。
…まったく。



七夕祭り。

願いを、現実のものとする日。

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