冬の朝(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

寒い。
起き上がった長谷部はぶるりと身体を震わせ、再び布団へと潜り込んだ。
普段ならこのような怠惰な真似はしない。
ただ今日は非番だと言っていた…たまには良いだろう。
「…ん…」
隣にいた光忠が小さく身動いだ。
彼もまた寒いのだろう。
そっと頭を撫でて身体を寄せれば光忠の顔が綻んだ。
それを見て長谷部もふっと笑む。
…そういえば、昔にも似たようなことがあったっけ。




昔も昔。
まだ、長谷部が大太刀だった頃。


その日も寒い朝だった。
数日前まで暖かかったはずだが、この寒さはなんだろうか。
「…?」
少し暖が欲しいと思った矢先、体の半身だけが暖かいことに気づいた。
「…これは」
布団を剥がし、目を見開く。
くっついていたのは、黒髪の小さな子ども。
穏やかな寝息を立てる、可愛らしい長船の一振り。
あどけない表情の光忠、だ。
いつも早い時間から起き出し、長谷部を起こしに来る子どもは、朝の寒さに負け長谷部の元に潜り込んだのだろう。
「…ん、ぅ……」
「…仕方がないな」
柔らかな髪を撫で、長谷部ももう一度布団を被った。
たまには良いだろう。
寒い、穏やかな冬の朝。

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