あたためる(ねんへし燭ワンドロSSS

寒い。
ここのところとみに寒くなってきている気がする。
…今年は暑かった期間が長かったからだろうか。
去年より寒暖の差が激しい気がした。
それは冬を迎えるのが2回目である自分達も…。
…初めてである、彼らにしても。


「…さむい」
小さく言ったのはねんどろいどへし切長谷部である。
彼がこの本丸に来たのは9月も終わりの頃で(顕著したのは4月の終わりごろだったが)確かにまだまだ暑い時期だった。
だから寒さになれていないのは分かる。
長谷部とて寒いのが得意なわけではなく、寧ろ苦手なほうで。
故に分身と言うべき彼が【こう】なるのも良く分かる。
分かる…のだが。
「やりすぎじゃあないか?」
「…さむいものをさむいといってなにがわるい?」
呆れ、ころころとした球のようなそれ…ねんに言えばじろりと睨まれた。
思った以上に寒さが堪えているらしい。
どてらに股引、首巻に挙句、靴下まで…どうやら主に作ってもらったのだろう、清光いわく「ねんへしならぬもこへし」と称されるのが良く分かるほどに着膨れしていた。
これがもっと寒くなったらどうするのだろうか。
…前に安定が言っていた、「冬眠とかしそう」というそれが現実味を帯びてきた気がして首を振る。
そんなまさか、小動物でもあるまいに。
と、ふとかたんという音がした。
何だろうとそちらを見れば、畑作業でも行っていたのか鼻の頭と手先を紅く染めたねんどろいど燭台切光忠が障子を開けたところで。
「ああ、ねん光か。おかえり」
「!!」
「!みつ!」
ひょこりと顔を出した相手に声をかければ嬉しそうに部屋に入ってくる…前にねんへしが駆け寄った。
「ああ、またおまえはこんなからだをひやして…」
「?!;;!!」
「だめだ。かぜをひいたらどうする」
己が着ていた防寒具を全てねん光に着せ、満足そうにねんへしが笑う。
「;;」
「おれか?おれはだいじょうぶだ」
心配そうなねん光にねんへしは笑って見せ…ぎゅ、と抱きついた。
やれやれ、と長谷部はまた書類に向かう。





体温を分け合いましょう。

冷たい貴方に暖かい熱を半分こ。



二人でいればあったかい。



(冬の幸せ、醍醐味を)

name
email
url
comment