勤労感謝(へし燭SSS・ワンドロお題)

勤労感謝。

それは、古くは違った意味を為していた言葉で。
「…燭台切さんは座ってて!」
「光忠さんが仕事してたら意味ないんですからね!」
「…はいはい」
いつからだろうか。
働く者に感謝をする日と位置付けられるようになったのは。
「ってかへし切はぼうっとしない!」
「…そーですよ、長谷部さん。しっかり手伝ってください?」
「…分かっている!」
いつからだろうか。
己が割りと強いたげられるようになったのは…!
「…まったく」
「…。…ね、僕手伝うよ?」
「…いい、座っていろ。あいつらが五月蝿くて敵わん」
ため息を吐く俺にそっと進言してきたのは先程怒られていた光忠である。
可愛らしく笑む様子にほだされそうになるが、それをしっしっと手で追い払った。
「…で、も」
「…普段お前は近衛としてよくやっている。本来近衛の仕事でないことまでな」
言い淀む光忠を座らせながら俺は言ってやる。
彼、燭台切光忠はこの本丸の近衛だ。
主に付き従い、時には現世にも赴き、書類仕事もこなして。
挙げ句、掃除洗濯家事は彼に一存し畑仕事まで任せっぱなしだ。
だからこそこの二人が「今日は燭台切光忠を休ませる」と宣言したのだろう。
…彼自身が落ち着かない様子ではあるのだけれど。
良く働く彼の手を持ち上げ、口付ける。
「…長谷部、くん?」
「少しは手伝わせてくれ。感謝の意味も込めて、な」
「…もう」
目を丸くしていたが、やがてくすくすと笑う光忠。


今日は勤労感謝。

良く働く彼に感謝をする日。


「「そこっ!いちゃいちゃしない!」」

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