年越し(へし燭SSS・ワンドロお題)

今年も、もうすぐ…終わる。

「長谷部くん」
穏やかな光忠の声に俺は振り返った。
微笑む彼は手にお盆を持ち、その上に何かを乗せている。
「…蕎麦か」
「うん、年越し蕎麦だよ」
はい、と湯気の立つどんぶり鉢を差し出してきた。
中身は海老の天ぷらに葱、そして温泉卵が乗った蕎麦。
…朝から何かやっていると思ったら。
「来年も末長く宜しくね、長谷部くん」
「ああ」
可愛らしく笑む彼に俺も笑いかける。
…末長く、か。


除夜の鐘が鳴る。


年の終わりと、年の始まりを告げる鐘が。



来年も、その次も……永遠に。


彼と共にいられますように、と願った。



(それは除夜の鐘では消えない、煩悩より強い確固たる想い)

name
email
url
comment