姫始めで媚薬で!(ザクカイ)

「ザッくんー♡」
「…っ!路々森」
上機嫌で抱きついてこようとするユズを避けながらザクロは、何か用か、と聞いた。
ユズがこのテンションの時は大概良い事がないのである。
そしてそれは今回に関しては当たっているようだった。
「もー、相変わらずローテンションだにゃー、ザッくんは♡」
「ゆーず先輩?!また忍霧さんに絡んで!」
無駄にテンションが高いユズにかけられたのはカリンの声で。
「なんだぁい、カリリン♡ヤキモチかにゃー?」
「言ってませんて。もー、すみません、忍霧さん」
申し訳なさそうに…なぜ彼女が申し訳なさそうにするのかは疑問ではあるが…謝るカリンにザクロは、いや、と言った。
「ところで、なんです?それ」
「あぁ、コレかい?…媚薬だよ。カリリンには見せただろう?」
ふとカリンがユズが持っていた小瓶に目を留め聞けば、ユズはあっさり答える。
思わずザクロはきょとんとした。
「…媚薬?」
「そうとも!ボクがね、研究に研究を重ねて作った最高傑作でさぁ!」
聞き返すと、ぱあ!とユズが嬉しそうな声で説明してくる。
「まだ持っていたんですか?それ」
「だってぇ!ボクがせっかく作ったのにカリリン使ってくれなかったじゃないかぁ!」
「誰がそんな妖しい薬使うんですか。大体、媚薬なんて効能的に信じられると…」
「…何の話だい?嬢ちゃん」
うわぁあん!と抱きつくユズにやめてください!と言うカリン…仲が良いな、とぼんやり思っていたところにかけられた声はザクロもよく知るもので。
「…鬼ヶ崎」
「よっ。伊奈葉ちゃんがぜんざい作ったから食べに来ませんか、だと」
「おお、ひーみんのぜんざいかぁ、良いねぇ」
「ユズ先輩、おせち料理あんなに食べたのにまだ入るんですか?」
「甘い物は別腹だろう?カリリン」
「…まあ、そうですけど」
きゃっきゃと言い合う女子二人をくすくすと笑って見ていたカイコクが小さく首を傾げる。
「路々さん、それなんでぇ」
「ん?あぁ、これかい?…媚薬だよ。ボクが作った」
「へぇ…」
ちゃぽんと小瓶を振りながら笑うユズに、カイコクがにやりと口角を上げた。
何だか嫌な予感がする。
じり、と逃げようとするザクロにカイコクがにっこりと綺麗な笑みを浮かべて見せた。
そして。
「忍霧、飲んで?」
とんでもない事を言い出すカイコクに思わずぽかんとする。
「…はぁ…??」
「いやいやカイさん、それはいくらなんでも無茶ぶりが過ぎるんじゃないかい?」
「そうですよ、鬼ヶ崎さん!忍霧さんにそんな…可哀想です!」
焦った女子二人が止めてくるが、カイコクはそうかい?と涼しい顔だ。
「俺ァ媚薬の一本や二本飲めない奴ぁ男じゃないと思うがねぇ…?」
「…何…?」
「ま、忍霧にゃ難しい案件だったかもなぁ」
けらけらと楽しそうに笑うカイコクにユズが「煽って大変なのはカイさんだぜ?」と言う。
「大丈夫、忍霧にそんな勇気ある訳…」
「…路々森、それをくれるか」
尚もそう言うカイコクを尻目にザクロは低い声でユズに手を伸ばした。
え、と三人がこちらを向く。
「…忍霧?」
「…忍霧さん…?」
「ザッくん、あのな、これは……」
「いいから」
何かを説明しようとするユズから、問答無用、と瓶を半ば無理矢理奪い取り、中身を全部煽った。
「…これで満足か?鬼ヶ崎」
「~~っ!ったく!すまねぇ、伊奈葉ちゃんにぜんざいキャンセルしといてくんなァ!」
ギロリと睨むザクロの手を取り、カイコクが自室に向かって走る。
「…大丈夫ですかね、鬼ヶ崎さん」
「…あれ、飲み物に数適入れるだけで効果が出るんだが……」
そんな二人を見送ったカリンとユズは顔を見合わせ、そっと手を合わせたのだった。


さて、カイコクの部屋に連れて来られたザクロは何故か彼の手拭いで縛られていた。
「…おい、外せ鬼ヶ崎!!」
「だぁめだ。お前さん、普段でも手加減しねぇのに媚薬なんて俺がどうなるか分かったもんじゃねぇ」
「…貴様がっ、悪いんだろう!」
ハァ、と荒い息を吐き出す。
ユズが作った媚薬は正真正銘本物のようで、目の前のカイコクにブチ込みたくて仕方がなかった。
全部飲んだのは流石に失敗だったろうかとぼんやりする頭で思う。
体はどんどん熱くなる一方なのに…これでは生殺しだ。
「…辛そうだな?忍霧」
くす、とカイコクが笑う。
最初からそう言っているだろうに、と睨むが彼はどこまでもいつも通りだった。
「しゃぁねぇなぁ」
「…なに、をっ」
「気持ち良く、させてやる」
妖しく笑い、カイコクはザクロのスラックスを脱がせ前を寛げる。
やめろ、と声を上げる前に彼はパクリとザクロのものを口に含んだ。
「ん、ふぁ、ぁ…」
ジュルジュルと音を立てながら舐めたり吸ったりを繰り返すカイコクが上目遣いで気持ち良いか聞く。
もちろん気持ち良い、が、それどころではなかった。
「お、い…鬼ヶ崎……っ!頼む、もうはな、せっ…」
「んー?りゃえー♡」
「出るっ!出るからっ!離せっ…っ、ぁ、あぁっ!」
ザクロの必死の願いも虚しく、びゅるびゅると精液が飛ぶ。
ぴしゃりとカイコクのキレイな顔にかかった。
「…すっ、すまな…!」
「ん、いっぱい出たな、忍霧?」
慌てて謝ろうとするザクロに、カイコクが笑む。
ゴクリと思わず喉が鳴った。
「…ここに、出してェか?」
トン、とカイコクが己の腹に手をやり、聞いてくる。
激しく頷くザクロに彼は美しく笑い、下着を脱いだ。
「…ま、て…鬼ヶ崎。これを解け!」
「駄目だって言ったろう。いつも好き勝手やられてるお返しでぇ」
手の拘束を解けと懇願するザクロにカイコクはあっさり言ってのしかかって来る。
ん、あ、と鼻にかかった甘い声がザクロの脳天を貫いた。
「んぁ、あ…はい、る…っ!ん、くぅっ!」
甘ったるい声を上げ、カイコクはザクロのものを飲み込ませる。
「ぁは…っ、入った、ぜ…忍霧?」
へにゃりと笑い、カイコクが緩く腰を揺すった。
それだけでイキそうになるが、カイコクはそれを許さない。
「…お、いっ!」
「きもちいか?忍霧」
「…良いっ、からぁ…っ!イカせてくれ、たのっ、む!」
「早すぎやしねぇか?もうちょい楽しませてくれ、忍霧♡」
可愛らしく笑い、カイコクがゆるゆると腰を振った。
激しくしたり、それでイキそうになればぴたりと止めたりしてザクロを翻弄する。
ただでさえ若い身体なのに、媚薬が入っているのだ。
我慢なんて出来るわけもない。
それなのにただカイコクは笑うだけだった。
「…鬼ヶ崎、鬼ヶ崎ぃ…!」
「イきたい?だめ♡」
好き放題腰を振り、さんざ寸止めをしては極限まで煽ったカイコクからお許しが出たのは何度目の懇願のあとだったか。
「鬼ヶ崎ぃ、頼、む…イカせて、くれっ…!」
「良いぜ、んっ、忍霧♡」
「…ぅぐ、ぁ、あああっ!」
「ふぁ、ああっ!!…は、ぁ…」
びゅくびゅくとカイコクの腹の中に精液を吐き出し、カイコクもそれを受け止めて自身もイッた。
「…ふふ、姫始めってやつだな、忍霧」
にこ、と笑い、引き抜こうとしたカイコクの…腰を掴む。
え、とカイコクが綺麗な目を見開いた。
「忍霧、お前さん…なんで拘束が取れて…?!」
「…鬼ヶ崎、よくも散々俺を煽ってくれたな?」
怯えた表情の彼にザクロは笑顔を見せる。
「…覚悟は出来ているんだよな?鬼ヶ崎」
ばちゅん、と奥まで突き入れ、ひっと喉を鳴らすカイコクをガツガツと突き上げた。
「ふぁっ、あぁあっ!!やめっ、やだぁっ!ごめ、ごめん…っ!」
「何を謝っているのかわからんなぁ、鬼ヶ崎!」
「ひぐっ、ぁっああっ!!!」
カイコクの躰がビクビクと跳ねる。
イったと分かっても止めてやる気はなかった。
それに、まだ全然足りない。
数時間後、彼の躰には数回分の精液が埋め込まれていた。
ぐったりとザクロに体を預けてくる彼から引き抜き…ころりと体を反転させる。
「も、もう勘弁してくんなぁ!」
「ダメだ。…あぁ、俺を弄んだ仕置をしないとな?」
泣き叫ぶカイコクに笑い、先程拘束されていた手拭いを彼の目に当て頭の後ろできゅっと結んだ。
「…鬼ヶ崎、パカが言っていたんだが…ゲームは正月中はしないらしい」
「…ぁ、あ……」
「貴様が考えた姫始めに付き合ってやったんだ。俺の考える姫始めにも付き合ってもらうぞ、鬼ヶ崎」
敏感になっているであろう耳元にそっと囁き、ザクロはバックから突き入れる。
「ぃううっ!ぁ、ああっ!やだぁっ!おしっ、おしぎりぃ…!取って、取ってくんなぁ!」
「貴様、俺が頼んでも取ってくれなかっただろう?」
「ふぁあっ?!ぁあ、あ、はんせ…してる…からぁ!!」
「今日は意識が飛んでも続けるぞ。媚薬を飲ませたこと、後悔させてやるからな…!」
「そ、そんな…ひぅう?!ぁ、あ…だめ、だ…や、やぁあっ!!ぅあっ、ああっ!」
ザクロの恐ろしいそれにカイコクがひっと声なき悲鳴を上げた。
カイコクの嬌声が部屋に響きわたる。
ザクロの宣言通り、カイコクの意識が飛ぼうがもう無理だ壊れると泣きじゃくって懇願しようがメスイキを繰り返そうが止めず、犯し尽くし、媚薬がようやっと切れ理性が戻った頃にはどろっどろになったカイコクがいて。
「…おし、ぎりぃ…?」
枯れた声で首を傾げる彼を、甘く甘く抱くのは…また次の話。

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