吸血鬼ミクさんとルカちゃんと!()ミクルカ

彼女を見たとき、天使はこの世にいるんだなぁ、と、思った。
まあ、吸血鬼の私がいるくらいなんだからそりゃあいるでしょうけど…なんて馬鹿なことを考えてしまったのも、きっと、お腹が空いているせいで。
この所、栄養源である血を全く飲んでない。
夢魔ならもうちょっと楽に獲物狩り出来たのかなーなんて思いを馳せた。
例えば、この綺麗な人の夢ならとても美味しそう。
コラールピンクのふわふわした髪、白い肌、ラピスラズリよりももっともっと青空に近い色の瞳。
フィッシュテイルの黒いドレスに赤いリボン、黄色い髪留め。
「どうか、したの」
少女っぽさを残したハスキーな声が降ってきた。
…誰に?
私に。
…私に?!!
「ご、ごごごめんなさい?!まさか認識されてるなんて思わなくて!」
「…別に。こんなところで何をしているの」
焦る私に表情一つ変えず、彼女はもう一度言う。
「私は初音ミク!こう見えて吸血鬼なの!」
「…そう」
「驚かないの?」
淡々と答える彼女に拍子抜けしていると、ふわりと首を傾げた。
「別に…どんな人類がいたって驚かないわ」
「へぇ…変わってる」
「そうかしら。それに、本にはいくらでも記述があるわ。本物は、初めて見たのだけれど」
「まああんまり吸血鬼は外に出ないかもね。その辺、インキュバス達のが盛んか…も?」
喋ってる途中にぐらりと世界が回る。
やばい、そろそろ空腹が限界みたいだ。
ああ、最期にこの娘の血が飲みたかったなぁ…。
「…私の血で良いの?」
上から微かな声が聞こえる。
朦朧とした頭でこくんと頷けば、何か温かいものが口の中に落ちてきた。
それは喉を通り過ぎて空腹を訴えるお腹に染み渡る。
与えられるまま飲み干して、朦朧とした意識がはっきりしてきた頃、私はゆっくり起き上がった。
「満たされた?」
「…血を、分けてくれたの?」
「…欲しいと、言うから」
不思議そうに彼女が言う。
「ありがとう。ええと」
「…ルカ。巡音ルカ」
「ルカちゃんね!本当にありがとう!助かったわ。何かお礼をしなきゃ」
ルカにそう言うと彼女はほんの少し首を傾げた。
「私が勝手にやっただけなのだけれど」
「助かったのは事実だし!」
「…。…じゃあ、色んな話を聞かせて欲しいわ。ここは、退屈だから」
力を込める私にルカはそう言う。
高い塔、そういえばルカはここで何をしてるんだろうと思ったけど聞くのをやめた。
代わりに、任せて!と答える。
「吸血鬼のミクさんから見た、とっておきの話をしてあげる!」
それは、昔々から始まるお話。
(腹ぺこ吸血鬼は星降る夜に、お人形さんみたいな女の子に恋をする)

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