君に飽くまで好きって言いたいお年頃!(ザクカイ)

「…好きだ!…いや、違うな……俺は好きなんだが貴様はどうだ……これも違う…」
「なぁにやってるんだい、ザッくん?」
ブツブツと部屋の真ん中で呟くザクロに声をかけたのはユズだった。
「おわっ?!…路々森、更屋敷に伊奈葉まで」
驚くザクロの背後には声をかけてきたユズの他に不思議そうなカリンとヒミコがいる。
「あぁっ、驚かせてしまってすみません……」
「いや、こちらも集中していた。すまない」
申し訳なさそうにするヒミコにザクロも謝った。
そも、驚かせたのはユズなので、ヒミコが謝る筋合いもないのだが。
「…ところで、何をそんなに一生懸命になっていたんですか?忍霧さん」
「何やら、好き、とかいう言葉が聞こえたようだが…」
こてりと首を傾げるカリンと、にやにや笑うユズの対比に、ザクロはほんの少しだけ嫌な顔をした。
ヒミコやカリンはともかく、ユズは面白がるに違いない。
「…。…何でもない」
「何でもないことないだろう、ザッくーん!ボクらに教えたまえよ!」
固い声で答えるザクロに無邪気にユズが問いただそうとする…そんなやり取りを止めたのはカリンとヒミコだ。
「ちょっとユズ先輩?!!無理矢理聞き出すのは良くないです!」
「そっ、そうですよ、ユズさん!忍霧さん、嫌がってますし!」
「なんだぁい、二人だって気になるくせにー」
必死な二人に悪い笑顔のユズが言う。
途端、そりゃあ、まあ…と口籠るカリンとヒミコに、女子はコイバナ好きだな、とザクロはここに来てから何度目かの思考を巡らせた。
「…別に大した話ではない。…この前、イベントがあっただろう」
「ん?あぁ、あったねぇ。随分メタい話を持ち出すな、ザッくん」
「そこ突っ込まなくていいですから!…それで?」
くすくす笑うユズに突っ込んでカリンが続きを促す。
「それで、鬼ヶ崎が告白していただろう」
「あぁ、してたわね、ゲームで」
「してましたねー。サラッと言ってて格好良かったです、鬼ヶ崎さん」
カリンの言葉にヒミコがほわりと笑った。
「まあそれで、だ。鬼ヶ崎が出来るなら俺にも出来るだろうと…な」
「ああ、それで好きだのなんだのを繰り返していたのだな?」
「そうだ」
ザクロのそれに、ユズがなるほど、と笑みを見せる。
頷けば他の二人もああ、と言った。
「でも、そういうのって相手がいないと上手くイメージ出来ないんじゃないかしら?」
「そうですね。誰かを思うと考えなくても出てくるものですし」
カリンとヒミコが口々に言う。
なるほどな、と思っていればユズが二人に抱きついた。
「じゃあ二人はあの時誰を思っていたんだい?!なあ!」
「わっ、ユズさん!!」
「ユズ先輩、くっつかないで下さいってば!」
「…何やってんでぇ?」
元気だな、と思っていれば頭上から声がする。
見上げればきょとんとした顔のカイコクがいた。
「…いや、少し。…鬼ヶ崎、寝癖付いてるぞ」
まさか愛の告白どうこうを本人に言うわけにもいかず、ふと目をやった先で揺れる黒曜石色のそれがぴょこんと跳ねているからそう指摘する。
手を伸ばそうとすれば彼も身を屈め、目を瞑った。
まるでそれが当たり前のように。
髪に手をやり…ふとキスを強請っているようにも見えるそれに小さく笑い、そのまま引き寄せる。
「…?!!っはぁぅ、なにっしやが…!」
「…すまん、愛おしくなって、つい」
「なっ、な…??!」
口を離せば、顔を真っ赤にして文句を言うカイコクがいて、思わず笑ってしまった。
年上の、いつも少し離れた場所にいる彼がとても身近に思えて。
「可愛いな、鬼ヶ崎」
「…っ!あのなァ…!」
「そういうのも含めて好きだと言っているんだが?お前が飽くまで好きだと言ってやろうか」
「…飽きねぇのはお前さんだろうに…」
口をついて出たそれは紛うこと無き本音なのにカイコクは呆れたような、それでいて嬉しそうな顔をする。
それを見たザクロは、やはり彼は可愛らしいな、と再びカイコクを引き寄せたのだった。

「あれ、かんっぺきに私達の事忘れてますね。忍霧さんもまあ大胆というかストレートというか…ちょっと意外だわ」
「ボクやカリリンはともかく、ひーみんがいるのも忘れているな?カイさんも満更じゃあなさそうだし…人前は嫌がると思っていたがねぇ…」
「あはは…。でもいいんじゃないでしょうか。仲が良いのは素敵だと思います」

(さて巻き込まれた仕返しに、何を聞き出してやろうかな、なんてね!!)

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