冬のアカカイ♀

「クリスマスですよ、カイコクさん!」
ワクワクと、サンタコスにまで身を包んだアカツキのそれは、彼女のふぅんというあっさりしたそれで躱されてしまった。
「…え、それだけですか?」
「…。…他に何があるってェんだい?」
あんまりにあっさりした返答に聞き返せばカイコクは嫌そうな顔でこちらを見る。
同じ年上コンビであるユズならもうちょっと乗ってきそうなものだが…随分まあ簡素だ。
確かに彼女は行事事にあまり興味がないようなのである。 
聞けば、「この歳にもなって行事ではしゃいだりしねぇだろう?」とのことで、どうやら性格差らしかった。 
しかし、クリスマスは特別苦手なようで。
「クリスマスですよ?クリスマスー!カイコクさんもケーキ食べたりシャンメリー飲んだりしましょうよー!」
「甘いの嫌い」
ごねるアカツキに、子どもっぽい返事が寄越される。
こんなにきっぱりと嫌いを出してくるのは珍しいから、余程なのだろう。
だが、アカツキだって引いてはいられない。
何と言っても今日は彼女と過ごす、初めてのクリスマスなのだ。
「カイコクさん、行事苦手なんですか?」
「ん?そんなことねぇぜ?…節分は楽しみだし」
「じゃあ」
「…。…クリスマスには良い思い出ねぇからな」
はぁ、と息を吐く彼女がようやっとそう言う。
「じゃあ、俺と良い思い出にしましょう?」
「…。…言うねぇ」
詰め寄るアカツキにカイコクはきょとんとしてから、ふは、と楽しそうに笑った。
それからイタズラっぽい表情を作る。
「それで?どんな風に良い思い出に変えてくれる気でぇ、入出君は?」 
「…!まずこれを着てください!」
可愛らしく笑う彼女に持ってきていた衣装を見せた。
途端に嫌そうな表情になる。
「…コスプレはしない」
「えー、サンタさんですよ?」
「ミニスカサンタはサンタじゃねぇ!!!」
全力で拒絶するカイコクに上目遣いで手を握った。
…この表情に、彼女が弱いのを知っていてなお。
「…だめ、ですか?」
「…う…」
「…良い子の俺にプレゼントはくれないんですか…?」
じぃっと見つめていれば、分かったわかった!とホールドアップの姿勢を取った。
何だかんだ、カイコクはアカツキに甘いのだ。
「…すぐ脱ぐからな」
「はーい!」
ブスくれながらシャワー室に消える彼女を元気な返事と共に見送る。
…そうして。 
「…可愛らしいですよねぇ、カイコクさん」
にっこりと笑って窓の外を見た。
いつの間にか雪が降っていて、今日は奇しくもホワイトクリスマスであったらしい。
「…君にはあげませんよ。俺のカイコクさんですから」

ねぇ、もう一人の『俺』。


独りごちてアカツキは立ち上がった。
彼女は、己のものだ。
絶対に、絶対に渡したりなどしない。
…いつの間にか芽生えていた独占欲にくすりと笑い…気分を切り替えた。
まだカイコクが着替え終わるまで時間がかかるだろう。
一旦外に出てパカメラを呼び寄せた。
彼女の機嫌が悪くなる前に、寿司を頼んでおかなくてはならないから。


今日はクリスマス。
サンタはプレゼントを配る存在だ。
…ならば、自分へのプレゼントは自分で用意しなくては。


「わぁ、カイコクさん可愛いです!やっぱり思った通りですよー!」
「そりゃあどうも。…って、入出、お前さんどこに手ぇ入れて…っ?!」
「すぐ脱ぐんですよね??…カイコクさん?」
「そういう意味じゃね…!や、だ…っ!!」

(甘ったるい彼女の悲鳴が上がる、せいなる夜、の漢字変換が聖だなんて誰が言ったんでしょうね!)

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