男は犬ではないのですよ?(レンカイ+彰冬)

「あ、見てみて、レン!」
此処はストリートのセカイ。
楽しそうに呼ぶのはバーチャルシンガーであるKAITO、その傍らで珍しく柔らかな笑みを浮かべるのは青柳冬弥だ。
見ない組み合わせだな、と思うがそういえば最近仲良くなったのだっけ、と思い出す。
「何なにー?…犬?」
覗き込んだ先にあったのはスマホで、その中には可愛らしい犬の写真が収まっていた。
「ぽちくんって言うんだって。可愛いよね」
「よく行くゲーセンの近くにいる子なんだ。…セカイには動物がいないというから」
ニコニコと笑うKAITOと、柔らかな笑みで言う冬弥に、なるほど、と思う。
「ぽちは可愛いし…賢いんだ。芸もする」
「へぇ?どんな?」
「一般的だぞ?お手とかおかわりとかお座りとか」
冬弥はそう言うものの、画面の中の犬は芸をしている様子はなかった。
首を傾げていれば、あ、と冬弥が小さな声を出す。
「…この時は俺の手が塞がっていたから…芸はしなかったんだ」
「ん?」
「犬を撫でながらの撮影は俺には難しかった」
そう教えてくれるが、彼には相棒がいたはずで、とそこまで思い、少し離れた場所で立っていたその人が浮かんだ。
「…犬、苦手なんだね…彰人くん」
そうっと耳打ちするKAITOに冬弥がこくりと頷く。
ギロリと睨まれた気がしたから慌ててその話題を終えた。
「でも良いよね、動物って。可愛いもん」
「…そう、ですね」
ふふ、と微笑み合う二人に、随分仲良くなったなぁと思う。
衣装もいつの間にか揃いで、何だか悔しいくらいだ。
「…レン?」
KAITOが首を傾げる。
別にぃ、と返せば青い目を瞬かせてくすくすと笑った。
そうして。
「んえっ?!」
「大丈夫、レンも可愛いよ」
にこにこ笑い、KAITOがレンの頭を撫でる。
「可愛くねぇし!オレが目指すのは格好良いだし!」
「ふふ、ごめんね?レン」
言い返すがKAITOはあまり気にしていないようだ。
…これもいつもの事なので気にしてはいないが…それでも凹んでしまうのは何故だろうか。
「…何やってんだよ…」
「…彰人」
いつの間にかこちらに来ていた彰人が呆れた声で言う。
「彰人も何とか言ってよー!KAITOってばオレを子ども扱いすんだよ?!」
「そんなことないよ?可愛いなぁとは思うけど」
「それが子ども扱いなんじゃん!」
可愛らしく笑うKAITOに文句を言うが、彰人はいいんじゃねぇの、と言うばかりだ。
「?彰人も撫でてほしいのか?」
「いや、何でだよ。オレ犬でも子どもでもねぇし」
不思議そうに言う冬弥に嫌そうな表情を浮かべる彰人。
「…なら」
「あー…。…甘えられる内に甘えとけってことだよ」
レンにそう言いながら、彰人は冬弥の肩に顎を乗せ、のしかかる。
重いんだが、と言いながらも嫌がりはしない冬弥に、なるほどなぁ、と思った。

使えるものはなんだって使うべきだろ?

それが男ってモンなんだからさ!

(犬だって可愛いふりして実は肉食獣なんだぜ!)



「彰人も見るか?ぽちの動画。可愛いぞ」
「いや、オレは…。…なあ、こいつ冬弥の股の下しつこいくらい潜ってねぇ??」
「気のせいだろう。俺の顔を舐めたりはするが、基本的には良い子だ」
「…お前、こいつのトコ行くの禁止…!!」

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