ほのぼのザクカイ

「…」
朝からザクロは小さなため息を吐き出した。
原因は目の前ですやすやと寝息を立てている男にある。
ジョギングをして帰ってきてシャワーを浴びる…その間には起きていると思ったのだが…甘かったようだ。
カイコクは朝に弱い。
「お前さんが早すぎるだけだろう?」と彼は言うが…それは違うと思うのだ。
そうしてカイコクは寒さにも弱い。
どちらかといえば朝よりも寒さに弱い気さえするくらいだ。
着膨れするくらいに着込み、いつもの薄着はどうしたと突っ込みたくなるほど彼は寒さに弱いらしい。
…まあそこも可愛いと思うザクロとて…なかなか末期だとは思うのだけど。
「…鬼ヶ崎、そろそろ起きろ。とうに朝食の時間だぞ」
「…んぅ…。…きょう、は…げーむ…なかった、だろ…ぅ?」
舌足らずの声音で返ってきたそれは起きる意思が感じられなかった。
「…確かに今日はゲームの予定はないが。…規則正しい生活が大事だと言っている!」
「…ひっ?!…な、にっ、しやがる!」 
布団を剥がそうとし、代わりに己の手をズボッと彼の服の中に突っ込む。
案の定パッチリと目が開き、ギっと睨んできた。
「早く起きないほうが悪いんだろう」
「…。…早く起きたところで何もねぇってのにかい?」
「何もない事はないぞ。島を散策したり脱出方法を調べたり。何かはあるだろう」
「…休息も大事だって、パカが言っていた」
「妙なところだけパカに賛同するんじゃない…鬼ヶ崎!」
もそもそと布団に潜っていくカイコクに思わず怒鳴る。
嫌な顔はするものの起きる気はないのか、布団を頭の上まですっぽりと被ってしまった。
こうなったカイコクは強情で、動かなくなるのをザクロはよく知っている。
はぁ、と小さくため息を吐いた。
「…休息、させなきゃなんねぇ躰にしたくせに」
「…うっ…」
その溜め息にカイコクがムッとした様子で言い返して来る。
昨日散々彼の躰を貪ったザクロは何も言い返すことが出来なかった。 
「…分かった。貴様が起きたくなるまで待つ」
渋々そう言い、布団から頭を出して綺麗に微笑むカイコクを見やる。
お許しが出たのを良い事に彼は二度寝する気満々だ。
…だったら。
「ぅひっ?!な、に…?!」
「?言っただろう?貴様が起きたくなるまで待つ、と」
躰をビクつかせ、振り仰ぐ彼にしれっと言いながら冷たくなった手を彼の肌に付ける。
じんわりとした温かさが伝わってきた。
「つ、めた…っ!やめ、ひぅ?!」
「だがまあ、何もしないとは言っていないからな」
「…っ!卑怯、でェ…!」
「貴様が言うのか、それを」
涙目で睨むカイコクに言いながら手を脇腹に移動させる。
「…や、め…忍霧!!」
「…起きるのか?もう?」
「…!起きる、起きるっつって…んっ、ふ…!!」
口を抑えながらじたじたとカイコクが暴れた。
とっくに布団はズレているがザクロはカイコクを離す気はなくて。
「寒いなら暖かくなることをすれば良い。そうだろう?鬼ヶ崎」
とさりと覆い被さってザクロは言いながらマスクを外す。
昨日散々ヤった…!と涙目のカイコクへ否応なく口付けた。
彼の躰が布団へと沈み込む。
「今日はゲームもないし…二人きりでのんびりしよう。な?」
「おっ、前さんのそれはのんびりじゃね…!…ゃっ、あっ、んー…!!!」
本格的に抵抗はしない優しいカイコクに漬け込んでザクロは深いキスをした。


熱くなり、ついでにドロドロなった体に再びシャワーを浴びせなくてはいけなくなるのは…あと数時間後の話である。

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