ワンドロ/雪・マフラー

「名前に冬と入っているからと言って寒さに強いわけじゃない」
それが冬弥の、冬の口癖だった。
だから寒さには弱いんだろう…そう思っていたのに。
「…何やってんだ、お前」
呆れた声で思わず呟く。
彰人、と嬉しそうな声が凛とした空気に乗って届いた。
「…雪だ」
「見りゃわかる。…んで?何でこのクソ寒ぃのに指定のコートだけなんですかねー?」
道に座り込み鼻の頭を紅くして少し楽しそうに言うから、尋ねる言葉がついつい厭味ったらしくなってしまう。
冬弥もそれに気づいたのだろう、きょとんとしてから小さく笑い、すまない、と言った。
「父親が玄関に居たから、小言を言われる前に飛び出してきたんだ」
「そりゃ。…カバンに手袋くらい入れとけよ、入るだろ?」
「…今度からそうする」
素直な冬弥に、彰人はまあ良いかと息を吐く。
「ほら、これ巻いとけよ」
あまりに寒々しく見える冬弥に、自身が巻いていたマフラーを外してかけてやった。
「…しかし、それでは彰人が」
「オレはいーんだよ、パーカー着てるし」
「…。…風紀委員がいないと良いな」
くす、と笑い冬弥が立ち上がる。
「テメ、人の好意を」
「…ありがとう、彰人」
「…。…ん」
目を細めて笑う冬弥が可愛らしく、それだけで許してしまうからまあ自分も大概チョロいな、と思った。
「ふふ」
嬉しそうに冬弥が微笑む。
今日は随分機嫌が良いようだ。
「?どうした」
「いや。…彰人の匂いがする」
マフラーに顔を埋めへにゃりと笑む。
思わず天を仰いだ。
「…お前さぁ、そういうとこだぞ?!」
「…?すま、ない…?」
ふわりと冬弥が首を傾げる。
降る雪積もっていたそれがとさりと落ちた。


寒い冬でも暖かくなるのは、きっと彼と一緒だから。
いつまでも共にと願う、そんな冬。


「ところで、何作ってたんだよ」
「…ラビットユキネ…」

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