ワンドロ隔週/リング・涙

バイトしている雑貨屋に置いてあったそれに目を奪われた。
特に珍しいわけでもない。
そういえば女子が一時期騒いでいたような気がしないでもないな、と思った。
「…」
少し考えてからそれを手に取る。
これは、彼の細い指に似合うだろうな、と…それだけを思った。


「…彰人」
「おぅ」
バイトが終わった、と連絡をすると冬弥も、今委員会が終わったからそちらに行く、と返してきた。
少し待っていればいつもの冬弥がこちらに歩いてくる。
「お疲れ様、彰人」
「お前もな」
ふや、と笑う冬弥に彰人も微笑んだ。
軽い表情が出来るようになったな、と思う。
この所色んな人に囲まれているからだろう。
…良い事だ。
その一要因が自分にもあれば良いと。
「…?彰人?」
冬弥が首を傾げる。
わりぃ、とすぐ謝ってから練習に向かおうと言いかけ…止まった。
「…なぁ、冬弥」
「?…どうしたんだ」
「手」
「…手?」
綺麗な手を差し出し不思議そうな表情をする冬弥のそれを掴む。
驚きに目を見開く冬弥の、左小指に小さなリングを一つ、嵌め込んだ。
「…これ、は」
「…。…ピンキーリング。バイト先で見つけてな。お前に似合うだろうなと思ったから…」
照れ隠しに言葉を紡ぐ。
流石に指輪は重すぎただろうか。
ちらりと横目で彼を見れば、ポロポロと涙を溢していて。
思わずぎょっとしてしまった。 
「泣く事ねぇだろ?!」
「…あ、すまない」 
涙を拭ってやれば冬弥は今気づいたようで曖昧な笑みを浮かべる。
「…嬉しかったんだ。…大切にする」
「…ん」
ふわ、と花が咲くように笑む冬弥に彰人も笑いかけた。


知っていたかい?
ピンキーリングにも意味があるってことを。
知っていたかい?
左右で持つ意味が変わることを。

…知っていたかい?
冬弥は彰人の何気ない行動に救われているということを!


(きらりと光る左のピンキーリング


その意味は)

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