お前と奏でる協奏交響曲(サンフォニーコンチェルタンテ)司冬

綺麗な歌が聴こえたんだ。

「…冬弥!」
「…。…司先輩」
呼ぶオレに、ふわりと冬弥が笑む。
柔らかい微笑みを浮かべるようになったな、と思いながら近寄って隣に座る。
「珍しいなぁ、冬弥が。寒いのは苦手だろう?」
「たまには外で食べるのも良いかと思いまして」
首を傾げるオレに冬弥が小さく笑みを浮かべた。
冬弥はあまり表に気持ちは出さないタイプだが…今日に限ってはそれ以上の意図はないようだな。
「なら、今日はオレも此処で食べるとしよう!」
「…良いんですか?」
ニッと笑い、弁当箱を掲げれば冬弥が首を傾げる。 
弁当を食べるのに良いも悪いもないんだがなぁ。
「勿論だとも!オレの可愛い冬弥とのランチタイム、最高に素晴らしいじゃあないか!」 
「…。…そう、ですね」
「それに、誘われたからな」
格好良いポーズを決めてから言えば、冬弥はきょとんとした。
「…。…俺、今日は誘ってませんよ…?」
「いや、誘われたんだ。…冬弥の歌に」
さらりと髪を揺らす冬弥にパチンとウインクをする。
実はランチをする場所を探していた時、綺麗な歌声が聴こえたんだ。
シンフォニーとも、コンチェルトとも違う。
大体、オーケストラがいないのだから違うのは当たり前なのだが…如何にも、幼少の時に聴いた冬弥のピアノやバイオリンが重なって聴こえてしまったのだ。
言うならば、少し歪なサンフォニーコンチェルタンテ。
オレは、これが好きだった。
愛おしい、オレの冬弥が紡ぐ楽曲が。
冬弥自身があまり好きでなかったとて。
歌も、ピアノも、バイオリンも。
オレは、冬弥の全ての音が好きなんだ。
「…聞こえていましたか」
「勿論だ。…冬弥の歌、だからな」
少し恥ずかしそうな冬弥にオレは笑む。
「…なら、一緒に歌ってくれませんか?」
「む?」
「俺の歌は俺だけでは成り立ちませんから」
眉を下げて言う冬弥に、何を、と思った。
あれだけ周りに認められていて!
だが…そうだな。
「オレが歌えば冬弥を喰ってしまうが…仕方ない、先輩として、今日はしっかり支えてやろう!」
「よろしくお願いします」
冬弥が笑む。


美しく微笑む冬弥から溢れるメロディは


オレにとって天使のそれと同位


(あの日、冬弥と初めて出会ってから今まで、冬弥はオレの天使なのだから!)

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