年越し司冬

セカイで年越しをしよう!と司たちは集まっていた。
お菓子やジュースを持ち寄っていつもより賑やかしく過ごしていたのだが、途中でジュースが無くなったことに気付き、「ちょっと買ってくる」と司はセカイから抜け出したのである。
僕も行こうか?と問う類を断ったのは、あのメンバーをKAITO一人に任せるのはあまりに可哀想に思ったからだ。
寧々もミクやえむにかかれば引っ張り込まれてしまうタイプだし、レンやMEIKOは当てにならない。
その点類は悪ノリはするが引き際が分かっているので任せるには適任だったのだ。
司がツッコミ疲れたのもある。
「…ふう」
コンビニから出て司は小さく息を吐いた。
目まぐるしい年だった、と司は笑みを浮かべた。
それだけに充実していた、と思う。
…と。
「…司先輩?」
小さな声が聞こえ、司は振り返った。
「おお、冬弥!」
首を傾げていたのは青柳冬弥、司とは幼馴染でもあり可愛い後輩でもあり…愛しい恋人、でもある。
「…どうした?仲間たちとカウントダウンパーティーでは?」
「…飲み物が無くなったので、買いに来たんです」
「ふむ、オレと同じか」
カサ、と袋を掲げる冬弥に司は笑みを浮かべた。
「…先輩も?」
「ああ。類が着いてこようとしたんだが、現場の収拾が付かなくなりそうなのでな」
「…俺と同じですね」
「む?」
小さく微笑む冬弥に首を傾げると、彼は「彰人が一緒に行こうかと言ってくれたんですが、買い物よりもそっちが大変そうだったので任せてきました」と笑む。
「なるほどな」
肩を揺らし、ちょいちょいと冬弥を呼び寄せた。
「?先輩?…っ!」
「せっかく二人っきりになったんだ。少しゆっくりしないか?」
近寄ってきた冬弥の手を引きニッと笑う。
綺麗な瞳を見開いた彼は、わずかに微笑み、はい、と頷いた。

「しかし、1年というのは早いな」
「…そうですね」
隣に座り、缶コーヒーに口をつける冬弥が同意する。
冬弥はよく笑みを見せるようになった。
良い事だと思う。
「…なぁ、冬弥」
「…はい」
改めて名を呼び、向き直った。
「好きだ」
「?!」
きっぱり、そう言えば冬弥は驚いた表情をする。
そう言えばあまり口には出してこなかったかと冷たくなった彼の手を取った。
「オレはお前が好きだぞ、冬弥。…これまでも、これからも」
「…。…俺も、です」
真摯に気持ちを伝える司に冬弥が微笑む。
愛しさが溢れ、気づいたら彼に口付けていた。
「…っふ」
口を離し、とろん、とする冬弥が可愛いな、と思う。
「可愛いな」
頭を撫でると冬弥は頬を染めた。
ずっとこのまま一緒にいたいが…仲間たちが心配するだろう。
そろそろ帰ろうと立ち上がった。
「…司先輩」
「?冬弥?」
きゅ、と服を掴む彼に司は首を傾げる。
「…あの、年を一緒に越してくださいませんか?」
「オレで良いのか?」
思いもかけないお願いに嬉しくなりながらも聞いてみれば冬弥が「先輩が良いです」と笑んだ。
「ならば、共に新しい年を迎えようではないか!」
「…はい」
微笑む、可愛い恋人を抱きしめる。
冷たい風が吹くが、司は幸せだな、と笑った。

もうすぐ、年が明ける。

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