類冬ワンドロ・恋話/相手の好きなところ

「ねーねー、冬弥くん、恋話しよ」
昼食終わり、瑞希は冬弥にそう言ってにこりと笑った。
恋愛話、というのはそれに仲良くないと出来ない、と思っている。
人の内部に切り込むのだから、当然だろう。
それなりにナイーブな内容…この真面目な冬弥が、どう言うかも気になるし。
「…恋話…?」
「そ、恋話!どういうタイプが良いーとか、恋人の条件ーとか!」
首を傾げる冬弥に勢い良く言う。
くだらなく思うそれでも、人間性が出る話題だと、瑞希は思うのだ。
一般論で返してきても良いし、偏見混じりのそれでも構わない。
ただただ聞いてみたかった、というのが本音だ。
「…そう、だな。…条件、というほどではないが…俺を撫でる手が、大きい方が、良い」
「…ん?」
「…それから、不意に褒めてきたり、そういう、柔らかい声、とか…が、優しい人が、良いなと、思う」
「…んん??」
少し考えてから、柔らかい声で言う冬弥に、瑞希は首を傾げる。
それは、条件というよりも。
「…?暁山?」
「…あーっと…冬弥くんを撫でるってことはさ、身長高い人が良いってこと?」
「…。…そう、だな。そうかもしれない」
ふわふわと冬弥が笑う。
完全に惚気けられてるなぁ、と瑞希は冬弥を見つめた。
存外色んな表情を見せる彼に、面白い、と瑞希は「それって…」と切り込もうとした…その時。
「…やぁ、冬弥くん。それに、瑞希も」
「…!神代先輩!」
少し向こうからやってきた類に、ありゃ、と瑞希は言葉を引っ込めた。
類に話しかけられた冬弥が嬉しそうな声音になる。
おやおやまあまあと瑞希はそっと笑った。
図書室のお人形さん、なんて誰が言ったのだろう。
彼は、好きな人を前にこんなに可愛い表情をするのに!

恋人の条件、それは。

「…まー、馬に蹴られる趣味はないよねぇ」

くすくすと思わず笑う。


…しばらく冬弥に恋話を振るのはやめよう、と思う瑞希であった。


「類は、恋人の条件、何かある?」
「…ふふ、そう簡単には教えないよ?」

(恋人の条件と称した、冬弥の好きなところ、なんて特に、ね!)

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