ワンドロ・罰ゲーム/女装

「ねーねー、彰人くん!羽つきしよう?!」
唐突にリンが目をキラキラさせながら言った。
それに、何言っているんだという目をしたのはおねだりされた彰人の方で。
「…いや、今何月か分かってるか?リン」
「え、もうすぐ6月でしょ?」
何言ってるの、とリンはキョトン顔だ。
分かっててそれかと彰人は嘆息した。
「あれは正月の遊び。だからやんねぇ」
「えー?!じゃあ杏ちゃんやろー!」
「うん、いいよー!」 
リンが矛先を向けた先の杏があっさりと承諾する。
いいのかよ、と小さく彰人が突っ込んだ。
「KAITOもいるし、負けないと思うんだよね!」
「いや、だから」
「負けたら女装するよ、KAITOが!」
「待って、リン?KAITO巻き込むのは駄目じゃない?!」
「じゃー、うちが負けたら冬弥が女装するね!私も、負けない自信あるし!!」
「待て待て待て冬弥を巻き込んでんじゃねぇ!」
勝手な約束をするリンと杏に思わず突っ込んだのはレンと彰人だ。
「ちょっと、KAITO!」
「冬弥もなんか言えよ!」
ぐるりと振り返って話題に出された2人を見る。
この際6月に羽つきをするのは良い。
だが、罰ゲーム付、しかも女装となれば話は別だ。
「別にボクはどっちでも良いよ?なんだか涼しそうだし」
「俺も別に支障はないな。歌えなくなるわけでなし」
当の本人は別に気にしていないようであっさりそう言う。
「衣装何が良いかなー。冬弥もKAITOさんも何でも似合いそうだもんね」
「メイドさんと制服はバグで着たし、いっそドレスみたいなのはどうかな?!ウェディングドレス!」
「え、セカイにあるの?」
こちらの都合は気にしない杏とリンが話はどう考えても不穏だった。
「多分あるよぉ。まあ踊りにくそうだけど」
「まあねー。普通のパーティードレスならまだしもウェディングドレスは…彰人?」
ウェディングドレス、と聞いて彰人は思わず固まる。
脳内で広がる、純白のドレス。
ふわりとひらめくヴェールに、細身の体を包んだAライン型のそれ。
罰ゲームで冬弥がウェディングドレスを着る…想像しただけで『嫌』だった。
「行くぞ、冬弥!」
「え、あ、彰人?!」
「あ、逃げたぁあ!!」
何か言われる前に冬弥の手を引きセカイを走る。
杏やリンから逃げるように。
「彰人…?どう、したんだ」
「…お前の……ウェディングドレス姿なんて見せられるかよ」
息を切らしながら問いかけてくる冬弥に彰人は息を吐き言う。
途端、冬弥は目を丸くした。
「それは…似合わないから、か?」
「逆。似合いすぎるから、だ」
首を傾げる冬弥に彰人はさらりとした髪を触りながら言う。
想像しただけで、…例え女装だとしても…美しく、誰にも見せたくないと…そう思った。


「つか、似合わねぇわけないだろ、お前の女装」
「…それは、褒められているのか…??」

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