司冬ワンライ・テスト勉強/頭を撫でる

「テスト勉強、か?」
図書室に来ていた司は恋人であり幼馴染、かつ後輩の冬弥から「一緒にテスト勉強をしたいのですが」言われ、司は首を傾げた。
はい、と頷く冬弥に司は少し疑問を擡げたが、まあ良いかと思う。
冬弥からそんなお願いがあるのは珍しいのだし。
「オレは構わないぞ!今日は咲希もバンド練習があるし、両親もいないからうちに来ると良い」
「…!ありがとうございます」
頷く司に冬弥はふにゃりと表情をくずす。
可愛らしいなぁ、と司も笑った。


その数時間後、司と冬弥は机を挟んで向かい合っていた。
「…うん、全問正解だ」
「本当ですか」
問題集を解き終わり、丸つけをしていた司は最後を丸し終わり、そう言う。
ホッとしたような冬弥に問題集を返した。
「流石だなぁ、冬弥は。特別テスト勉強をしなくても良いんじゃないか?」
「…実はそうなんです」
カラカラと笑う司に冬弥は曖昧に微笑む。
うん?と首を傾げれば彼はほんの少し困ったように口を開いた。
「む?」
「普段から復習と予習をしているので特別『テスト勉強』というのをしたことがなくて。少し苦手なところの勉強を増やすくらいなんですが、テストだからといって変わったりは…」
真面目な冬弥らしい悩みに、司は目を見開き、それからふは、と笑う。
「そうかそうか!冬弥は偉いんだな!!」
「わっ」
腕を伸ばし、わしゃわしゃと頭を撫ぜた。
彼は真面目だから、きっと気にしていたのだろう。
クラスの皆がテスト勉強をしている中、そんなことをしたことがない自分に。
テスト勉強をしたい、と思い、その相手に司を選んでくれたことが嬉しく思った。
「っと、すまん!年下扱いをしてしまったな」
「いえ。…先輩の手は大きくて…好きです」
ふわ、と笑う冬弥をちょいちょいと呼び寄せる。
不思議そうに来る冬弥を抱きしめ、それからその髪に指を通した。
頭は良いのに少し不器用な冬弥が愛らしい。
そんな彼が好きだと…そう思った。
「冬弥は冬弥らしくいれば良い。…勉強も、それ以外も、な」
「…はい」
司の囁きに冬弥の柔らかな返事が耳に届く。
夏の風が、司の部屋を吹き抜けた。


二人で共にいる、ただそれだけが嬉しくて

本来の目的を忘れそうになった、なんて


(ただいま『人生』勉強中!)


「しかし、冬弥にはオレから教えられることはないかもしれんなぁ」
「…そんなことは…ないですよ…?」

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