ワンドロ/海・水着

こはねが臨海学校に行くことになった。
「…臨海学校……」
その話を聞き、羨ましそうな声を出した冬弥に彰人はまさか、と眉を顰めた。
「…行ったことねぇのか」
「…ああ。ピアノやバイオリンの練習ができなくなる、と参加は許されていなかった。だから、臨海学校も林間学校も、体験したことはないな」
少し、ほんの少し寂しそうな顔をする冬弥に彰人ははぁあとため息を吐く。
そうして。
「これから一緒に体験すりゃいいだろ」
ぼそりと言った言葉は冬弥にも届いたらしかった。
ふわり、と冬弥が笑う。
「…ありがとう、彰人」
「…おう」
礼を言ってくる冬弥に彰人は目線を逸らした。
何だか少し照れくさい。
「つか、お前、泳げるのかよ」
それを隠すように彰人は笑ってみせた。
きょとりとした冬弥が口を開く。
「親に言われてプールは見学ばかりだったが泳げる。…多分」
「なんだよ、それ」
小さく付け足された言葉に、思わず吹き出した。
彼のこういうところが可愛らしいと思うのだ…口には出さないが。
「…なあ、海行ったことって…」
「…。流石に海には行ったことある。昔、海が見えるコンサートホールに…」
「いやそれ海メインじゃねぇだろ」
その言葉に呆れつつ、小さく息を吐く。
冬弥の天然発言は慣れっこだ。
「んじゃあ、まずは水着を買いに行くところからだな」
「…一緒に行ってくれるのか?」
彰人の提案に冬弥が首を傾げる。
当たり前だろ、とさも当然のように言えば冬弥は柔らかな顔をして、「…そうか」と言ったのだった。

海へ行こう


彼のイメージカラーに似た、海へ



「…冬弥、お前はラッシュガード買えよ。上着のと、足首まであるスパッツタイプのやつ」
「…??海には必需品なのか」
「当たり前だろ。…虫は端から排除するに限るからな」

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