司冬ワンライ・世界猫の日/甘える

今日は世界猫の日、なのだという。
セカイもみんな猫ちゃんなんだよー!とミクが楽しそうに行っていたっけ。
日本の猫の日は語呂合わせだが…これも何か意味があるのだろうか。
そう思いつつ、目の先にいる黒の猫を見つめた。
黒猫というのが不吉の象徴、というのは偏った風習のそれで、別の地域では黒猫は幸せを運ぶと言われているらしい。
…それは、司も肌で感じていた。
「…司先輩」
少し困ったように見上げる冬弥。
その膝には黒い猫が乗っている。
「…冬弥、どうしたんだ?その猫」
「いえ、あの…普通に座っていただけなんですが…乗ってきてしまって」
「ほう」
「最初は良かったんですが、俺もそろそろ帰らなければいけないというか…」
言葉を濁す冬弥に、隣に座りながら、ああ、と笑った。
人の良い彼は、きっと膝に乗ってきてしまった猫を無碍には出来なかったのだろう。
「猫よ、冬弥の膝が良いのはわかるが、そろそろオレに返してくれまいか?」
ちょん、と司は笑いながら猫の鼻に指を乗せる。
寝ぼけ眼を晒した黒猫はくは、と欠伸をした。
「すまんなぁ、冬弥はオレのものなんだ」
「?!司先輩?」
「猫とて、冬弥の膝を渡すわけにはいかんな」
笑い、猫をよいしょ、と持ち上げる。
意外と簡単に持ち上がり、そのまま自分の膝に移した。
「よしよし。オレの膝で我慢してくれ」
頭を撫でながら言うと黒猫は小さく鳴き、くるりと丸くなる。
野良猫の割に随分と人懐こいようだ。
「…。…司先輩は…」
「ん?どうした、冬弥」
小さく呟かれた己の名前に、司は首を傾げる。
すぐ、ハッとしたように、冬弥が「いえ」と誤魔化した。
だがチラチラと猫を見つめる彼を不思議に思っていたが、それは一瞬だけで。
冬弥を引き寄せ、わしゃわしゃと撫でる。
「?!司先輩?!」
「甘え下手だな、冬弥は!」
「…っ!!!」
「少しはこの黒猫のように甘えても良いのだぞ?」
にこにこと笑う司に、冬弥は戸惑っていたようだが、撫でていた司の袖を引っ張った。
そして。
「…にゃ、あ…?」
こてん、と首を傾げる冬弥。
揺れる猫耳はきっと幻覚。


甘え下手の可愛らしい恋人が、囁かに甘えてくれたこの日と、膝からそっと降りた黒猫に


司は最大級の感謝を、した


(本日、セカイ猫の日!!!)

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