ワンドロ・愛/真ん中バースデー

おめでとう、なんて相棒から言われて彰人はきょとんとしてしまった。
…何か特別な日だったろうか、今日は。
二人とも細かい記念日を特に大事にしているわけではなかったが誕生日や付き合った日くらいは二人でお祝いしてきた。
だが、そういった日ではなかったし…と首を傾げていれば冬弥はくすりと笑う。
「やはり分からないか」
「…あ?」
「俺も小豆沢や白石が言っていたから真似をして調べただけで特に…」
ほんの少しだけ寂しそうな冬弥に彰人は静止した。
「…彰人?」
「…当ててやるから言うなよ」
「…。…ああ」
その言葉に嬉しそうな顔で微笑んだ冬弥が黙り込む。
それに、可愛いな、という言葉をぐっと飲み込み、彰人は考え出した。
誕生日では勿論ない…冬弥は5月だし彰人は11月だ…出会った日や、BADDOGSを組んだのはもう少し前だ…ちなみにこれはお祝いした…恋人になったのも違う…初めてイベントに出た日…優勝した日……色々考えるがどれも違う気がして髪を掻き毟る。
「…ふふ」
「…あ?」
小さく笑う冬弥に彰人は睨んだ。
…こちらは真剣に考えているのに。
確かに楽しげな冬弥は可愛いけれど…なんだか複雑な気分だった。
「…んだよ」
「いや。…彰人が俺のことだけを考えてくれているのが…嬉しくてな」
ふわ、と笑う彼に、なんだか調子が狂ってしまって彰人は息を吐く。
こちらの気も知らないで。
まあ感情を素直に出すようになったのは良いことだが…ふとこの表情を前も見た気がして首を傾げた。
確かあの時は、こはねが何もない日に杏のためにお菓子を作ってきたのだっけ。
「お誕生日はもっともっと豪華にするからね!」と意気込むこはねに抱きつく杏といういつもの光景で…「私だってこはねにプレゼントあげたい!」と何やら作っていたっけ。
何の日だったか、と思っていれば冬弥がくすりと笑った。
そう、その時も冬弥は同じように笑って…。
「…あ、真ん中バースデー!」
「思い出したか?」
笑う冬弥に彰人は頷く。
真ん中バースデー、冬弥と彰人の誕生日から数えて丁度真ん中の日。
それが今日だ。
「…そういうことかよ」
「ああ。小豆沢たちが楽しそうだったからな。俺たちも、と思ったのだが…彰人?」
「ったく、教えとけよなぁ」
「…すまない」
くす、と笑う冬弥に、いーけど、と返す。
「…真ん中バースデーおめでとう。後、ありがとな」
「…こちらこそ」
2人は笑い合い、どちらともなく口付けた。

もらった愛を受け止めて、代わりに愛を囁こう。

これまでも、これからも。


それが…オレたちの…愛のカタチ、なのだから。

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