本日お誕生日様!!

「一つ宜しいでしょうか、初音さん」
「許可しないとずっと言い続けるだろ、どうぞ初音さん」
真剣な顔をする私、初音ミクの先天性男体亜種、ミクオくんが面倒くさそうに発言を許可してくれる。
「わぁい、ミクオくんやっさしぃ!!」
「思ってないくせに。んで?どうしたんですかー」
テンションを無理やり上げる私にミクオくんは嫌そうに言った。
なんか某私が出てるスマホゲームに似た子がいたよねー、誰だっけ、彰人くん?
見た目は似てないんだけど(当然ながらミクオくんは髪型以外私にそっくりだ)
まあそれは良いとして。
「ルカちゃんがね、朝からいないの」
「?毎年恒例のあれではなく?」
「あれではなく。流石の初音さんも14年目になるとね!自分のバースデーくらい覚えてますよ!」
首を傾げるミクオくんに、えっへん!と胸を張る。
それを見て、「去年も一昨年も覚えてなかったくせに」と言うミクオくん…悪かったってばぁ。
実は去年はまっったく覚えてなくて、ミクオくんに泣きつきに行ったんだよね。
そのせいでカイコちゃんとのラブラブタイムを邪魔しちゃって、ミクオくんはずーっと根に持ってるってわけ。
ミクオくんだってカイコちゃんの誕生日に拗らせたくせにねぇ?
あ、ちなみにカイコちゃんはカイトお兄ちゃんの先天性女体亜種なんだ。
カイトお兄ちゃんにまーそっくりの癒し系で可愛いのなんの。
ミクオくんもカイコちゃんには甘いんだよ?
「で?ルカさんがどうしたって?」
「ああ、そうそう。ルカちゃんったらねぇ、レコーディングに行っちゃったんだよ?!マスターもマスターだよね、そんな日にレコーディング入れるなんて!!」
ぷんすこする私に、ミクオくんは興味なさげにふぅんと言った。
もうちょい興味持ってくれても良いんじゃない?
私、ミクオくんよりお姉さんなんだよ?!!
「ミクオくん冷たいー!」
「どうせ惚気じゃん」
「話聞いてた?ルカちゃんいないって話だよ??」
「惚気じゃん」
きっぱり言うミクオくん…そ、そんなに???
「…あ、ミクちゃん。来てたんだね。いらっしゃい」
「カイコちゃん!こんにちは!カイコちゃんもレコーディングだったの?」
顔を見せたカイコちゃんがにっこりと笑う。
やっぱり癒し系だなぁ!
「そうなの。どうしても今日歌いたくて」
「?珍しいねぇ」
ふわふわ微笑むカイコちゃんに私は首を傾げた。
ボーカロイドである私達は、確かに歌わせてもらうのは喜びだけど、あんまり自分から歌わせて、なんてないのに。
「ミクちゃん、今からスタジオに行ったら丁度会えると思うよ?」
「ふぇ?」
「…姉さん」
「ふふ、ちょっとくらいヒントも必要でしょ?」
すっごく嫌そうなミクオくんに、パチン、とカイコちゃんがウインクをする。
何だかお兄ちゃんに似てきたなぁ…なんて思いながら、私はその場を後にしたのだった。



「こーんにーちはー!」
声をかけると、奥のスタジオから、慌てた声が聞こえてきた。
ん??
どうしたんだろ。
「み、ミク姉様?!」
「やっほー。ルカちゃん!お迎えに来ちゃった!」
珍しく焦った様子のルカちゃんに私はひらひらと手を振る。
『ルカちゃーん!出来たよー!』
「ありがとうございます!…あの、ミク姉様」
「?どうしたの?」
マスターのお友だちで、マスタリングとか担当してくれる小坂マスターの声と共にデータが送られてきた。
あれ?これ間違いじゃ…。
「…お誕生日おめでとう御座います、ミク姉様」
「うん、ありがと!ルカちゃん」
「先程のデータ…聴いて頂けますか?」
「?いいの?」
「はい」
頷くルカちゃんに、じゃあ遠慮なく、と送られてきたデータを紐解く。
聴こえてきたのは、ルカちゃんの歌声。
柔らかい…バースデーソング。
「…これ」
「私もボーカロイドですから。ミク姉様に歌をプレゼントしたくて…きゃっ?!」
歌声と同じくらい柔らかく微笑むルカちゃんに思わず抱き着いた。
…もう、もうっ!
「さいっこーのプレゼントだよ、ルカちゃん!!」


彼女の声が私の中に響き渡る。
それは、ボーカロイドである私達にとっては最高のプレゼント!


「時に他の声をプレゼントしてくれる気は…」
「え、と…?」
『初音さん、それセクハラ』
「いたんですか、マスター!!」

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