ワンドロ・ハロウィン/仮装

「あっ、彰人くんと冬弥くんだぁ!」
セカイに着いた途端、嬉しそうなリンの声に彰人はほんの少し顔を顰める。
上機嫌なリンなんて嫌な予感しかしなかった。
「…げっ」
「彰人くん、冬弥くん!トリック・オア・トリート!!」
元気に駆けてきたリンが勢いそのままに手を差し出す。
背中の羽根がふわりと揺れた。
「可愛い衣装だな、リン」
「ありがとう、冬弥くん!天使なんだけどね、羽根がもっふもふなんだよー!」
くすくすと笑いながら冬弥が差し出された手のひらにクッキーが入った小さな袋を乗せる。
いいんじゃねぇの、と彰人もその隣にキャンディを一つ乗せた。
「二人ともお菓子持ってるのすごーい!ありがとう!」
「今日ハロウィンだろ。…どーせ、なんかやるのは目に見えてたからな」
「イタズラされないように、先手必勝だと…さっき買いにいったんだ」
「なぁんだ、そうだったんだ」
無邪気にリンが笑い、そうだ!と楽しそうな声を出す。
「ねぇ、二人も仮装しようよー!」
「はぁ?なんでオレらが」
「いいじゃん!せっかくのハロウィンなんだよ?」
首を傾げるリンに、「やんねーよ」と答えかける彰人を、冬弥が遮った。
「そうだな。…少し、楽しそうだ」
「…冬弥」
「でしょ?!衣装はこっちだよ!」
口を挟む前にハイテンションのリンが冬弥を衣装部屋に連れて行ってしまう。
はぁ、と大きなため息を吐き出し、彰人は仕方無しに足を踏み出した。
流石に相棒1人に、リンを押し付けるわけにはいかない。
「見てくれ、彰人。海賊の衣装がある」
「…嬉しそうだな、お前」
存外楽しそうに衣装を見ている冬弥に近づきながら、彰人は笑った。
「そう、だろうか」
首をこてりと傾ける、自覚のない可愛らしい恋人に、彰人は触れるだけのキスをする。
「…Trick or Treat?」
「まだ仮装もしていないのに、それを聞くのか」
「細かいことは気にすんなよ」
小さく笑いそう言う彰人に、冬弥は目を細めた。
「彰人のトリックは、俺にとってのトリートなのだが」
「…そーいうトコな」
綺麗な笑みの冬弥に彰人は敵わねぇな、と笑いながら、今度は深いキスをする。
コーヒーしか飲まない彼とのキスは、とても甘い味が、した。



貴方がくれるそれは、いたずらでもおかしとなりうるのです!!


「わぁっ、冬弥くん海賊さんにしたんだね、格好良い!…彰人くんのそれなぁに?」
「…ゴースト」

name
email
url
comment