司冬ワンライ/イルミネーション・コート

急に寒くなった。
はぁ、と息を吐く度に白いそれが霧散する。
普段より街がきらびやかなのは、イルミネーションが輝いているからだ。
世間はもうすぐクリスマス。
フェニックスワンダーランドでもクリスマスショーが繰り広げられていた。
見に来てくれる人が皆楽しそうで、司も嬉しくなる。
今日は特に。
「…司先輩!」
「おお、冬弥ではないか!」
駆け寄ってくるのは恋人の青柳冬弥。
ぶんぶんと手を振る司に息を切らせて駆け寄ってくる。
彼にはチケットを渡していたのだ。
「お疲れ様です、先輩」
「おぉ!見に来てくれてありがとうなぁ、冬弥!!」
「いえ。先輩の素晴らしいショーを見る事が出来て嬉しいです」
にこにこと微笑む冬弥に、昔より表情が豊かになってきたなぁと思う。
「そうだ、この後何か用事は…」
「あー!雪の精のお兄ちゃんだぁ!」
聞く司を遮ってキラキラした声が響いた。
声がした方を見れば少女がこちらを見ていて。
そう言えばまだ衣装であるフワフワしたコートを着たままだった。
「…前もこんなことがあった気がするな…」
「司先輩?」
思わず苦笑いをし、きょとんとする冬弥の手を引く。
「そうだ!今から彼とこの街に幸せの雪を降らさねばならないからな!では!」
ショーのセリフと同じ事を少女に告げ、冬弥の手を取り走り出した。
キラキラと煌めくイルミネーションの中を、ニ人で。
ふわりとコートの裾が揺れる。
「…せ、先輩!」
「なぁ、冬弥!このままデートしないか!!」
振り返り、司は笑いかけた。
驚いた顔をした彼がふわりと笑う。
その表情に。

雪の精は冬の名をした彼に、何度めかの恋をした。


(キラキラ、イルミネーションが輝く光の下で


特別なデートをしようではないか!)

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