司冬ワンライ・お土産/待ち時間

先日アメリカに行ったからお土産を、と冬弥に電話すると「丁度練習が終わったので取りに伺いますね」と嬉しそうな声に、司も思わず笑顔になった。
冬弥が嬉しそうなのはお土産をもらえるから、ではない。
本人が「久し振りに司先輩にお会い出来るのが嬉しいです」と言っていたのだ。
「先輩、アメリカのお話、たくさん聞かせてくださいね」とも。
だから、外にいる冬弥に司が届けに行くのではなく、冬弥から来てもらうことにしたのだ。
家の中なら、気兼ねなくたくさん話ができるから。
何の話をしよう、と司はわくわくする。
やはり、本場のショーを見た話だろうか。
それとも迷子の少女を助けた話か、ライリー氏の話か。
彼の遊園地が本物志向で素晴らしかった話もしたい。
飛行機に乗った話はあまりしないでおこう…冬弥は高所恐怖症なのだし。
代わりに、類の英語が堪能で驚いた話をしよう、と決めたところで時計を見上げる。
司が冬弥に電話してからまだ5分と経っていなかった。
まだ来ないのだろうか。
早く会いたい。
早く会って話がしたい。
そういえば最後に会ったのはいつだったか。
「咲希!少し冬弥を迎えに行ってくる!」
「あれ?とーやくん、来てくれるんじゃなかったの?」
「いや、やはり来てくれるのを待つばかりでは、スターとしてのメンツが立たんというものだろう!」
「そっか、幸せは歩いてこない、だから歩いて行くんだねっていうもんね!」
「うむ、その通り!」
楽しそうな妹に頷き、司は外に出た。
待ち時間は苦手だ。
そわそわして、早く行動したいと思ってしまうから。

(愛しい人に早く会いたいのは、当然のことだろう?!)


「お、冬弥!久し振りだな!!」
「司先輩?!迎えに来てくださったんですか?」
「ああ!スターとして、お土産を早く渡したいのは当然…いや、違うな。オレが、愛している冬弥に早く会いたかったから迎えに来た!…会いたかったぞ、冬弥」
「…!俺も、早く会いたかった、です」

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