セカイの衣装バグが起こりましてしほはる

セカイにはバグがある…らしい。
想いの持ち主の体調不良だったり、音楽機器の不調だったり、その辺は曖昧だ。
だが、唐突に、意図せずに起こる。
それは、ほら、今回だって。


「うわー、皆格好良いね!」
咲希がはしゃいだ声を出す。
いつも通りセカイで練習しようとやって来たのは良いが、リンから「ねぇねぇ、知ってる?!このセカイ、更衣室があるんだよ!」と言われ、まあ見るくらいならと着いてきてしまった。
その際、一つロッカーを開けた途端衣装バグに巻き込まれてしまったのである。
今、メイコやレンが原因を調べてくれているようだ。
「ほっんとーにごめんね?!」
「…俺からも…ごめんね」
「そ、そんな、気にしないで?」
「うん。珍しい衣装着ることが出来て嬉しいし…。ね、志歩ちゃん」
「…まあね。…と、いうかこのセカイに軍服なんてあったんだ?」
必死に謝るリンと何故だか一緒に謝るカイト、それに言葉を返すのは一歌、穂波、志歩の三人で。
怒っていないと分かり、謝っていた二人もホッと顔を上げた。
衣装バグは厄介だが、今回はまだマシかな、と志歩はぼんやり思う。
ヒラヒラした服よりこういうかっちりした服の方が得意だ。
そう、今回の衣装バグで出てきたのは軍服、だったのである。
「衣装も誰かの想い、だから…誰かの影響を受けてるんじゃないかな」
志歩のそれにはミクが答えてくれた。
皆で見たフェニックスワンダーランドのショーが軍人と森の少女の話だったからそこに影響されたのかもしれない。
「多分、一旦帰れば元に戻ると思うのだけれど…」
困ったようにルカが言った。
普段は頼れるお姉さんである彼女の、この表情は珍しい。
それほど稀な出来事なのだろう。
別に練習に支障はなかったが、何かあっても大変なので元の世界に戻ることにした。

「…おっじゃましまーす!」
「はいはい、いらっしゃい」
咲希の元気な声に志歩は苦笑する。
両親は仕事が忙しいし、姉の雫も今日は配信準備があると言っていたからこちらまでは来ないだろう、と志歩の部屋で様子を見ることにしたのだ。

「お兄ちゃんが着たがってる私に貸してくれたんだよ、はるかちゃん!」
「っ、咲希」 
「…天馬さん?」
「うわぁ!!それ、新しい衣装?!水のお姫様みたい!」

「あ、えっとこれは…」
「…衣装作りの参考になるかと思って、借りてきたのよ!」
「愛莉」
「愛莉先輩!」

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