アキカイバースデー

「…ぅ……」
隣で気を失っていたカイコクが苦しそうに手を伸ばす。
「?カイコクさん?」
「…ぁ…?」
伸ばされたそれを握って声を掛ければ、彼は綺麗な瞳を開いた。
涙に濡れた瞳がこちらを映す。
「…っ、離せ」
姿を捉え、認識した瞬間、カイコクは顔を顰め、その手を振り払った。
釣れないなぁと笑う。
「カイコクさんが手を伸ばしてきたから握ってあげたのに」
「…。…頼んでねぇんだが」
「はは、まだ救いを求めてるんだ?」
睨むカイコクに、思わず笑ってみせた。
顰めた眉間のそれがより一層深くなる。
カイコクを閉じ込めて何日が経っただろう。
別にどうでも良いことなのだが。
「別に救いなんか求めてねぇんだがな。…求めたところで裏切られるのがオチでェ」
「ふぅん?」
「それに、救われるのを待つだけの、大人しいお姫様じゃねェんで」
「ふふ。カイコクさんはそうだよね」
強気な発言に肩を揺らす。
煽っても得策はないと思うのだが…確かに大人しいカイコクはつまらないし。
「じゃあ、何で手を伸ばしてたの?」
「…。…夢をみた」
「?夢?」
ひと呼吸置いて、カイコクが言う。
素直に教えてくれたことに驚きつつ、首を傾げた。
「誰か、大切な人を祝う日だった。だから、おめっとさん、って言って、頭を…」
ぼんやりとした言葉に、少し眉を寄せる。
すぐに、そう、と笑ってまたその手のひらを掴んで口付けた。
「っ!何しやが…!!」
「…別に、何も」
怒鳴ろうとするカイコクが、押し黙る。
何かを察したらしい彼に向かって、アキラ、は目を細めた。

おめでとうは誰に向けて言う言葉だった??


(祝ってほしいのに、忘れていて欲しかったなんて、我侭を通り越したエゴイズム)



(本日、    の誕生日)

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