司冬ワンドロ/流れ星・大きくなったら

何が出来るかな
何処へ行こうかな
誰に会おうかな
おおきくなったら


ふと、星空を眺めながらそんな歌を思い出した。
確かあれは教育テレビの…。
「司先輩」
「ん、おお、冬弥!」
かけられた声に振り向けば冬弥がスイカを乗せた盆を持って立っていた。
今日は流星群が見られるかもしれないということで、久しぶりに自宅に来てもらったのである。
テーブルにスイカを置いた冬弥が隣に座った。
「それにしても久しぶりだなぁ」
「そうですね。…星は、こうして司先輩と一緒に見るのが当たり前になっていたので…何だか懐かしい感じがします」
「…冬弥」
柔らかく微笑む冬弥が空を見上げる。
昔はよくこうやって星を見ていたものだ。
夜遅くなる冬弥の両親の代わりに司が側にいて星座について教えてやったのである。
お陰で遭難しかけた時に助かったと冬弥は言っていた。
そう、笑えるようになったのも司のお陰なのだと。
「…そういえば、最後に星を一緒に見たとき、流れ星に何を願ったのか、教えてくれませんでしたね」
「…む、まだ覚えていたのか」
「はい。大きくなったら教える、と言って下さったのも覚えています」
「全く、記憶力が良いんだなぁ、冬弥は」
「先輩の言葉ですから」
ふふ、と笑う冬弥に司は苦笑いを返す。
確かあの日、願ったそれは…。

『司さん、なにをおねがいしたんですか?』
『ん?んー、そうだなぁ…』
『わっ、わっ?!』
『まだヒミツだ!おおきくなったらおしえてやるぞ!』

冬弥の肩を抱いて、いたずらっぽく笑った先で、流れ星が煌めいた、その記憶が蘇り司は懐かしくなった。
あの頃からずっと好きだったのだ。
司は、冬弥の事が…ずっと。
「…まあ、願いは叶ったしなぁ」
「え?…わっ」
きょとんとする冬弥の肩を抱く。
そうしてあの時と同じ様に笑った。
「冬弥が、音楽を好きでいてくれますように、だ!」
「…?!」
目を見開く冬弥に、願いを伝えれば叶わなくなるだろう?と言えば冬弥も笑う。
「そうですね。…意味深な言い方をしていたので、何か別のことかと…」
「?何を言う。夢は掴み、叶えるものだ。願いは己の力が及ばないことを祈るもの。…オレは、冬弥との関係を願うほど、オレ自身ではどうにもならないと悲観してはいないからなぁ!」
「…司先輩」
「冬弥が隣で笑えるようにと流れ星に願うなら、オレはショーの一つでも披露しよう」
司は笑い、冬弥にキスをした。
視界の端で流れ星が光る。


大きくなったら冬弥と結婚したい、と願いかけてやめたことは秘密にしようと思いながら。

今日も二人で星を見る。


(大きくなったら、と夢を魅るなら

掴むよう手を伸ばすことが先決ではないか!)

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