司冬ワンライ/夏休みの宿題・夏の思い出

さて、本日は8月28日である。
「…うん、今年もバッチリ終わったな」
司は机の上にノートを並べて満足そうに頷いた。
咲希と二人、宿題の確認をしていたのだ。
もちろん、二人ともお盆の前には終わらせている。
「良かったぁ。抜けとかなくて!」
「だな。しかし、自由課題で工作とは…」
ホッとしたように笑う咲希を見ながら、彼女が作ったそれを手に取った。
自由課題は本来やってもやらなくても良い課題のことだ。
司は夏休みに見た舞台の感想をしたためたが、彼女は写真立てを作ったらしい。
臨海合宿で拾って作ったというシーグラスのそれには、幼馴染でありバンドメンバーとの写真が飾られている。
良い写真だなと思っていれば咲希は照れたように笑った。
「えへへ、今までやってなかった事がやりたくって!」
「…そうか」
「うん!…あ、お兄ちゃん、そろそろ時間は良いの?」
咲希が小さく首を傾げる。
目線を時計に向ければ約束の時間が迫っていた。
「おお、教えてくれてありがとう、咲希!」
「どーいたしまして!とーやくんに宜しくね!」
「任せろ!」
手を振る咲希にそう言って、司はカバンを手に取る。
遅れるわけにはいかないな、と司は笑みを浮かべて家を出た。


「冬弥!」
「…司先輩!」
待ち合わせ場所にいた彼に手を振ると冬弥も嬉しそうに微笑んだ。
「すまない、待たせてしまったか」
「いえ。俺もさっき来たところです」
柔らかく微笑む冬弥に司は息を吐き、隣に並ぶ。
今日は久しぶりにショッピングモールに行く予定だったのだ。
道中、他愛のない話をしながらも、ふとあることが気になり、司は聞いてみることにする。
「なあ、冬弥は宿題はもう終わったのか?」
「はい。ワーク系は7月中には終わらせました」
「ほう、やはり早いな…ん?」
頷いた冬弥にそう返したがふとある言葉が気になった。
彼は、ワーク系『は』と言ったのである。
「ワーク系は、ということは、まだ終わっていない宿題でも?」
「…実は、自由課題を日記にしたので…」
照れたように笑う冬弥に、なるほど、と司も笑った。
毎日コツコツ付ける日記にするとは、全く真面目な彼らしい。
「初めてのことが多い夏ですので、思い出を見返すためにも、と」
「ふむ、実に冬弥らしい自由課題だな!」
「そうでしょうか」
司の言葉に可愛らしく笑った。
「…俺は…司先輩との夏の思い出を忘れないようにしたかっただけですので」
ふわり、と笑みを浮かべる彼に、司は何の感想を抱く間もなく、冬弥の手を引いた。
驚く彼に笑いかけて、司は駆ける。
目的地であるショッピングモールに向かって。
「オレも、冬弥との夏の思い出を残しておきたい!…手伝ってくれないか?!」
「…はい、喜んで!」

夏の日差しが眩しく光る。


彼らの思い出を、太陽に乗せて!

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