司冬ワンライ/2周年・この先も手を

「冬弥!!!」
自分の教室の窓から愛しの彼が見えて司はぶんぶんと手を振った。
それに気づいたらしい冬弥が振り返り、少し探すような素振りをした後手を振り返してくれる。
「ふふっ、愛されているねぇ、司くん」
「おわっ、いたのか、類!」
「いた、というか司くんの声が聞こえたから寄った、という方が近いかな」
驚く司にくすくす笑った類が肩を竦めた。
特に用はなかったらしい。
「…なぁ、類」
「?どうかしたかな」
未だ手を振る可愛い恋人を見ながら隣に立つ類に司は問うた。
類が首を傾げる。
「…ここから飛び降りるのは理論上可能か?」
司のそれに類が目を丸くした。
ちなみにここ、とは2階の教室である。
「…。…まあ、可能ではない、と言い切るのは嘘になるね。そのまま飛び降りるのは危ないけれど、君の身体能力と昔作ったシューズがあれば、或いは…」 
「そうか!大丈夫なんだな!」
その言葉に司は大きく頷き、窓枠に足をかけた。
勿論その足には以前作ってもらったシューズを装着済みだ。
「では、後はよろしく頼む!」
「…?!司くん?!」
珍しく焦った様子の彼をおいて司は窓の外に飛び出した。
「はーっ、はっはっは!」
「つ、司先輩…?!」
それは冬弥も同じだったらしく綺麗な目を真ん丸くしてこちらを見ていて。
「…っと、着地成功だな」
「な、何故…」
すたん、と降りる司に冬弥は驚いたように聞いてくる。
愚問だなぁ、と司は笑い、胸を張った。
「冬弥の姿を見て、共に帰りたくなった。たったそれだけだが?」
「…!」
「それに、少し寂しそうにしていたからな。愛する冬弥に1秒だってそんな顔もさせられんだろう?」
「…司先輩…」
ぽかんとしていた冬弥がややあって微笑む。
「…。…司先輩は、変わりませんね」
「む?」
「いえ、2年程前でしょうか。あの時も司先輩は同じことを言ってくださったので」
柔らかい表情の冬弥に司はそんなこともあったなぁと笑った。
「もう2年か、早いものだ」
「そうですね」


「なあ、冬弥」
「…はい」
「今までも、この先も、この手を繋いで共に歩んでくれるか?」



司は手を差し出す。

真っ直ぐに、2周年なんて通り越したその先のミライを見据えるように伸ばして。


はい、と冬弥がその手を取った。



二人の関係は、これまでもこのときもこれからも、ゆるゆる続く!



「さて、手を取ったということはオレと逃げてくれるな?」
「…え?わ、先生方が、あんなに…!」
「走るぞ、冬弥!」

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