司冬ワンライ・だんじり/鐘の音

朝から聞こえる笛太鼓


村の鎮守の神様の




「…今日は休日だったか?」
楽しそうな子どもたちを見かけ、司は首を傾げる。
今は登校の時間帯、普段ならばランドセルを背負った子どもたちがいるはずだ。
だが、今日はランドセルの代わりに法被を着て駆けていく様子が多く見られたのである。
ああ、と答えてくれたのは久しぶりに登校時間が重なった冬弥だった。
「今日は秋祭りなのだそうです。3年ぶりのお祭りなので…近隣の小学校が休みなのだとか」
「そう言えば咲希も今日は祭りだと言っていたが…休校だったのか」
冬弥のそれにふむ、と司は目線を落とす。
祭りに力を入れているのは知っていたが…まさか休みにしてしまうとは。
きっと3年ぶりの祭りを思う存分楽しんでほしいのだろう。
「と、いうことは授業中に神輿を引っ張る姿が見られるかもしれんなぁ!」
「そうですね。…俺は、今まで見たことがないのでとても楽しみです」
ふわ、と冬弥が微笑んだ。
土日はピアノかヴァイオリンの練習に明け暮れていた冬弥である。
遠くから聞こえる鐘の音は、幼い心にどう響いていたのだろうか。
「…なぁ、冬弥」
「はい」
「学校が終わったら見に行ってみないか?」
司は笑う。
思い出を、憧れで終わらせたりはしない、と。
目を丸くしていた冬弥が嬉しそうに頷いた。
「…是非」

秋風が吹く。
二人の間に、わくわくする鐘の音を乗せて。


今日はめでたいお祭り日!

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