司冬ワンライ/衣装パロディ(エクラエトワール×ノーティス・ブレイシーズ)

「そういえば、トルペくんは何故楽団に入りたいと思ったんだい?」
「え?」
そう、いくつかの公演の後で聞いてきたのは団長だった。
トルペの才能を見出してくれたのは確かに彼だけれども、そう言えば楽団に入りたいと思ったきっかけが別にあったように思う。
生まれたときからピアノは身近にあったけれど…。
「…そう、ですね」
トルペは笑う。
昔出会って恋をした…彼を思い出しながら。
「星が、眩しかったからでしょうか」



初めまして、と言うそれは高音程の鍵盤から紡がれる音に似ていた。
「トルペ、と言います。ええと」
「…ノーティス、です」
おず、と彼はそう名乗る。
「よろしく、ノーティス。…君は、その…」
「…ごめんなさい」
「え?」
急に謝罪され、トルペは少し面食らった。
自分は何かされただろうか。
「…何かを謝られることは、されていませんよ」
「…僕は、その……」
優しく言うが彼は何かを言い淀んでいるようだった。
「…言いたくなければ大丈夫ですよ。僕も人前でピアノを弾けと言われると難しいですから」
「…!」
「難しいことを無理にやれ、とは言いません。…まあ僕は漠然と楽団に入りたいので、直さなければならないとは思っていますがね」
「…僕も、です」
力なく笑うトルペに、ノーティスが言う。
不思議に思い首を傾げれば彼は寂しそうに笑った。
「僕は、父からずっとピアノを教えられてきました。小さい時からずっとです。それが…最近苦しくなってしまって……」
「…そう、でしたか」
カタカタと震える彼の手をトルペは優しく握る。
「…トルペ、さん?」
「君がどんな感情でピアノを弾いているかは分からない。だからこそ、僕は君のためにピアノを弾こう」
「…!!」
「ピアノは、苦しいものではない。悲しいものでもない。美しかったり、楽しいだけのものでもない。…君の感情がどうあれ、ピアノは変わらない。それを、証明してみせます」
トルペは微笑んだ。
深い、夜空のようなノーティスの瞳に、トルペの星のような瞳が写り混む。
「僕は必ず楽団に入ります。そうして、君のために演奏してみせますよ」
「トルペさん…」
「時間はかかるかもしれないが…見ていてください」
「…はい、必ず」
ノーティスが涙を浮かべて頷いた。
その時からだ。
楽団に入りたいと強く思うようになったのは。


星降る綺麗な夜に


トルペは夢と恋を…旋律に乗せた

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